…俺は復讐のために生きている。

そのために旅をしている…奴がどこにいるかなんてわからない、何をしてるかだってわからない。
この旅がいつ終わるのか…奴をいつ見つけられるのか、奴をいつ殺せるのかなんてわからない。
この復讐を果たせるのか………それだけ、それだけはわかってる…決まってる。
"果たす"、必ず、絶対に、確実に…アイツを殺した奴を、俺が許せる訳がない…諦めるわけがない。
アイツを…エレナを殺した奴を…!許せる、訳がない!…俺はそのために旅を続けている。
復讐のために、エレナのために……俺の、ために…。

………そうやって旅を続けていた。情報屋に会ったりもしたが…それでも奴の情報すら掴めなかった。
いろんなところをふらふらとして…いろんな騒ぎを起こしてた…と思う。
いつしか俺は「無職の」だとか「食い逃げの」だとか「地獄の泣き虫」だとか「寝場所を選ばない男」だとか
「二日酔いの」だとか…そんな風に呼ばれていた気がする…。
まあ、俺にはそんなことはどうでもよかったんだがな…。

………ずっと、ずっと、旅を続けていた…復讐のことを考えて、奴のことを考えて、エレナのことを考えて…。
………何か、何かを忘れているような、そんな気がした。なにも、忘れていないはずなのに…。
………全部、目的ノ全部ハ覚エテイル、ハズ…ナノニ…。忘レル、モノナンテ、無イ…ソノハズ…ナノニ…。

…そんな旅を続けていたある日のことだ…。
多分、いつも通り当てもなくふらふらして…腹が減ってたかな…。
ミルクと一番安いメシ、それと調味料ありったけ…いつもの俺の食事を食べようとして、
ふと目についたバーのドアを開けたんだ…。

…今思えば不思議なことなんだが、入る前は一切聞こえなかったんだがな…。
そこは楽しげな連中がいて、賑やかで、活気があって……ここは俺には似合わないって、そん時は思ったよ。



「…ってのが俺がここに来るまでの話ってわけだ。…聞いてるか?」
<もちろん聞いてるわよ!私をなんだと思ってるの?…そうね、確実に記憶の混線ってのが起きてたみたいね。>
「ああ?ちゃんと聞いてたか。お前のことだから話半分にでも聞いてるかと思ったんだがな。」
<…私はちゃんと評価されないのが嫌なの!ちゃんと評価できないのも嫌なんだからちゃんと聞いてるわ!>
「そーかい、まあ聞いてんならいいんだ。」
<むー。まあいいわ、それで?続きはどうなの?>
「そうだな…それで俺はバーに入ったわけだが………」

「夢の途中 第一幕 タキシードは過去に舞う」

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