ムーンセルで作られた複数の英霊の力を兼ね備えた人工サーヴァント、英霊複合体のプロトタイプ。
とある計画の名前から引用されて付けられた、カムクライズルプロジェクト。
英霊複合体・プロトタイプの基本ベースとして用いられたのは復讐・少年と呼ばれていた英霊未満の何かであった。
自己改造EXで古今東西のあらゆる英霊を飲み込み、英雄王に必要な部分のみを残して昇華された存在。
基本ベースとなった復讐・少年は念願の大英雄へと生まれ変わったが、そこに待っていたのは絶望でしかなかった。
少年は強くなりすぎた。心を震わせる英雄譚を彼は紡げなかった。
英雄王の資質により何でも理解し、実現させられる。単純作業のような必然しかない物語しか紡げなかったのだ。
語らねぬ英雄王となった少年はただ退屈な物語の中にいる。つまらない、つまらないと口癖のように呟きながら。
分岐点となった狂犬殿にある想いを抱いている。但し、その想いは決して良いものではない。
あぁ、ただひとつだけ。英雄になる前の物語はそれはそれは素晴らしいものであったという。
「
英雄にならなければ、ボクはいつまでも夢を見ていられた! 此処で狂犬を倒せばボクの夢は終わらない」
特異点(狂犬について)
カムクライズルプロジェクトにおいて、狂犬と呼ばれている英霊は非常に重要な存在と言えよう。
彼が居なければ、英霊複合体のプロトタイプである英雄王は生まれなかっただろう。
ムーンセルのデータベースから幾らでも呼び出せる少年はその時、あらゆる方法で英霊複合体となる施術を受けていた。
自己改造EXで食い合わせて作る方法があった。データの切り貼りによって緻密に作成する方法もあった。
どのような方法でも途中まで上手くいった。しかし、ある地点で少年は絶対に崩壊する事象が発生してしまう。
カムクライズルプロジェクトはそこで暗礁に乗り上げたと言えるだろう。
少年は素体としては最高であり、失敗する原因などほぼないに等しい。だが、英霊複合体となる前に崩壊するのだ。
原因が分からぬまま、無限の時間に任せて多くの実験を積み重ねていくとある特異点とも言える存在がいることに気がついた。
狂犬と呼ばれる一人の英霊の存在だ。
その英霊が関わった事例のみがより先に進んでいく。英霊複合体にはなれないが、その一歩手前までは上手くいったこともあったくらいだ。
彼に何の秘密があるのか、データ的には所謂普通のサーヴァントである。神霊でもないし、概念でもない。
英霊複合体の完成させるためには、調査しなければならない。
狂犬を使い、何でも実験を繰り返し、データを積み重ねる。そしてある結論へと至る。
狂犬と少年が出会った時、少年の英雄に成りたいという想いをより強くする。
その想いは自己の崩壊を遅らせ、より英霊複合体に近づいていく。
あぁ、つまりは強い想いが必要だった。
想いが重要? 何とも馬鹿げた結果と言える。だが、全ての情報がその答えをはじき出す。
事実は受け止めなければならない。少年を英霊複合体するにはその英雄願望を想起させなければいけない。
しかし、数々の実験結果から狂犬以外の英霊ではその想いを高めることは難しい。なら、彼を中心として計画を進めるしかない。
カムクライズルプロジェクトは狂犬を中心とした、より想いを高めるものへと昇華されていく。
親、息子、先輩、後輩、恋人、親友、上司、部下、師匠、弟子、SE.RA.PHの箱庭であらゆる関係性を持たせて丹念に少年の想いを育てる。
地球で造られる王道作品のような波乱万丈の物語を演出し、渇望とも言える段階まで少年の英雄願望を高めていった。
そして、ある物語の終焉時、ついにカムクライズルプロジェクトは成就し、少年は英霊複合体のプロトタイプ・語られぬ英雄王へとなったのである。
彼、狂犬がもし居なければこのカムクライズルプロジェクトは成功しなかったと言えるだろう。
英霊複合体に重要な想いを気づかせた特異点、物語のおける重要な役割を果たした人材。
彼の存在に私は感謝しなければならないだろう。
月の裏側の支配者NPC。カムクライズルプロジェクト発案者、神座出流。
追記
英霊複合体のプロトタイプ・語られぬ英雄王は英霊の座に登録された時点で廃棄。
カムクライズルプロジェクトはアルターエゴプロジェクトに名称を変更して、引き続き英霊複合体の作成を行う。
???
肝心な所でセリフを噛んでしまう。かなり強いのだが、何処か抜けている面もあるのだろうか。
味噌ラーメンが大好き。月で出会った狂犬殿との思い出の品でもある。
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