「フーッ・・・フーッ・・・!!」

息を荒く、警戒して剣を構えるのは『怪物』だ。彼はすでにいくつもの手傷を負っていた。無数についた傷からは血が止めどなく溢れ、治る気配は一向にない。
だが、そうも激戦の跡を残すにも関わらず、広い部屋の中には何もない。ただ怪物の周りに血痕を残すのみだ。
誰も居ず、何もない。そんな中で、怪物は警戒を切らさず構えている。

シュッ!

「がぁ!?く、そがぁ!!」

どこからともなく風切り音が鳴り、怪物の腕が切り裂かれた。方向に見当をつけ剣を振るうも当たった感触は無い。怪物はただただ歯ぎしりを鳴らす。
実を言えば、この行動はかれこれ30分前から続いている。30分間もの間、怪物は攻撃を受け続けていたのである。

何も見当たらない空間。飛び道具が飛んできているわけでもない。まるで無に攻撃をされているかのような状況だ。
そんな不可思議な状況を成しえる存在がいるのであろうか?―――いる。いてしまう。
常識の外に在りうもの。まさしく超常の存在と言えるものが、この世には存在してしまっている。
相手はサーヴァント、アサシン。相手の死角に滑り込み、死の一撃を振るう暗殺者。

「くそ・・・フーッ・・・フーッ・・・」

彼らが姿を消す方法の大半が、アサシンのクラススキルである気配遮断によるものだ。
気配遮断は自身の気配を消す能力であり、完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となる。
人間は存在を認識するとき、視界に入ったものや感じる匂い、第六巻で察知する気配など、多くの情報からそれがいることや、それがなんなのかを認識する。
では感じる気配が無くなったら?匂いを消し、視界から入る”いることを認識する要因”を隠されてしまったら?もしそれを完璧にこなした場合、その存在は相手の目の前にいながら相手に認識されない。そんなことすら起こり得るのだ。
そんな普通に考えてありえない状況を、彼ら英霊はやってみせる。そも彼らにとって”そんなこと”は普通にこなしていたことである。気配遮断のスキルとは、そんな彼らの卓越した技術の証明であるのかもしれない。

そう聞けばどうしようもない強力な存在に聞こえるだろうが、彼らには共通した隙が存在する。気配遮断のスキルは、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がってしまう事だ。
その一瞬を突くことは多くの英霊にとっては容易いことだ。歴戦の英雄達にとって、一瞬とは永遠に等しき長き時間である。
さらに直感や心眼等のスキルがあれば、気配遮断中のサーヴァントを発見する事も可能だ。アサシンとは、強力ではあるが弱点の多いサーヴァントでもあるのだ。

だが『怪物』はただただ追い詰められていた。攻勢に出ることもかなわず、嬲られるように追い詰められていた。
『怪物』には直感や心眼のスキルはない。直感的に物事を判断することはあれど、それは人に近い怪物としての、獣の直感の劣化品である。
じっくり見て物事を把握することはあれど、即座に物事を看破するまでにはいかない。当然このレベルの直感では消えた相手を察知するのは至難の技だ。

そして相手になっているアサシンは、気配遮断の劣化時を狙う攻略法をさせてくれないのだ。
理由は単純で、今現在その姿と気配を消している方法が、スキルによるものと宝具によるものであるからだ。
その宝具の性能は強力で、姿はおろか、気配遮断の隙となる攻撃時に溢れてしまう気配さえ完璧に隠匿してしまっている。『怪物』はこの宝具にただひたすら翻弄されていた。

『怪物』は致命的な攻撃であれば察知ができた。命を狙う攻撃であれば当然のように殺気が乗る。その気配を掴むことは彼の直感レベルでも可能だ。
だが相手はそれを察知していた。故に命を奪うような強力な攻撃は控え、全身を削るような攻撃を散発的に繰り出している。
隠密に徹する相手―――直情的な行動や攻撃を得意とする怪物にとって、非常にやりづらい相手であった。

「っ、そこ!くっ、がはぁ!?」

感じた気配に対し攻撃を仕掛ける。だがまた手ごたえは無い。誘われたと気が付いたのは、その隙を狙った攻撃が来てからだった。

「くっ、そう・・・」

足を一瞬で三度切り裂かれ、思わず膝をつく。すぐに立ち上がろうとするも、力が入らない。攻撃を受けすぎている。
全身の生傷は10や20といった数ではない。生来の頑丈さがなければとっくに死んでいる。

どうしようもなく、『怪物』は敗北していた。

『トレーニング終了。疑似サーヴァント”ペルセウス”を消滅させます』

職員の声と共にトレーニングルーム内に満ちていた重圧が消滅した。
かの英雄は、再現された劣化体であり、姿も気配も感じられなくとも、ただいるだけで空間に負荷をかける。それほどの存在だった。

そう、怪物の相手はギリシャ神話に名高き大英雄―――ペルセウス。
『怪物』の母、メデューサを討った、仇と言える相手である。





これの始まりは第一特異点終了後。敵アサシンの正体を聞いた時からである。
トレーニングルームの修復が完了し、サーヴァント情報が手に入れば劣化した再現体を作成できることを聞き、憎い仇を使っての特訓を思いついたのであった。
いつ始めようかと悩んでいたところ、第二特異点のメンバーに選ばれなかったことと『妻王』との模擬戦の敗北がいいきっかけになった。
自分はもっと強くならなければならない。そう確信し、彼はトレーニングルームに籠もることを決めた。

『怪物』こと、真名クリュサオルは決して弱いサーヴァントではない。大英雄には劣れど、中堅上位には位置するサーヴァントである。
本家の英霊たちと比べるならば、佐々木小次郎に相性勝ちし、フランケンシュタインと互角の戦いを繰り広げ、ディルムット・オディナに相性で惜敗する。
本人の伝承が無いに等しくとも、メデューサの子でありペガサスの兄弟。神代の時代に生きた戦闘特化の怪物ともなれば、その霊格は単純にすさまじいものがある。

事実彼は慣らしとして、アサシンとデータの取れていないために再現のできなかったルーラー、ライダー以外の系5基の疑似サーヴァントを打ち破っている。
セイバー、アーチャー、ランサー、キャスターの4基を上から粉砕し、厄介なバーサーカーも群体であったために彼の宝具による防御性能を貫けず、持久戦の末潰された。
そして最後のアサシンで―――上記のとおりの惨敗を喫したのである。

アサシン、ペルセウスと『怪物』の相性は最悪と言っていい。
ペルセウスは多数の宝具を持つサーヴァントとされているが、アサシンの姿で持っている宝具は二つ。
ハデスより授けられた被った者の姿を消すマントと、不死身殺しの鎌・ハルペーだ。
マントの時点で相性は悪かったのだが、最大の問題となったはハルペーの方だ。多くの神霊や神性持ちを傷つけてきた結果からか、ハルペーは神性殺しの特性を帯びていた。
故に彼の宝具にである『我が半身なり黄金の剣(ユニファケーション・クリュサオル)』を使用してしまうと神性が高まり、むしろ大きなダメージを受けてしまう。彼の暗殺対策の一つが、ここで潰されてしまっていた。
さらにはじわじわと追い詰めていく戦法の効力もハルペーの回復阻害によって増大する。天性の肉体の副次効果による自然回復能力も、その前には無に等しい。

『怪物』の基本戦法である突撃からの力押しも、耐久による粘り勝ちも、完全に潰されてしまっていた。





「おりゃあああああ!!!」

第二戦、さきほど待ちに回ってダメだったことを受けてか、次は単純な速攻だ。
数を打てば当たると言わんばかりに、滅茶苦茶に剣を振り回している。だが当然のようにその攻撃はアサシンを捉えない。
そも本編での活躍もあって十四分割さんなどとネタにされてしまっているが、ペルセウスは大英雄の一体である。
メデューサを不意打ちで倒した以外にも多くの怪物と戦い、これを打倒している。勢いだけの攻撃にあたってしまうような英霊ではないのだ。

「くそ、当たりやがれよチクショウ!!」

むしろ隙が多いと言わんばかりに攻撃が飛んでくる。その苛烈さは先ほどとは比べ物にならない。
さらに動き回るために出血量がさらに多くなっていく。完全に悪い流れに乗ってしまっていた。
結果として、この戦いは10分と経たずに怪物の負けで終わった。






「・・・・・・」

第三戦。怪物は目を閉じ、剣を構えて佇んでいる。時折見た英雄の待ちの姿勢。それを試してみている。
実際のところ相性は良い。凪ぎの状態を作ることでわずかな変化に反応できるようにする。アサシンを相手取る方法の一つと言えよう。

ヒュッ

「ご、がぁあ!?」

―――だが、残念ながらその方法は『怪物』と相性が悪い。

戦いには『静』と『動』、二つのスタイルがあるとされる。
心を静め流れるような攻撃を得意とする『静』と、心を高ぶらせ、激しい攻撃を得意とする『動』だ。
静は動と相性が悪く、動は静と相性が悪い。どちらの方が強いということではなく、戦闘のスタイルや性格的な面での向き不向きの区分だ。
怪物のスタイルは完全な『動』であり、対して今の戦法は『静』の側に属している。単純に相性が悪いのだ。

さらに言えば付け焼刃でどうこうなるものでもない。凪ぎを維持し、しかし常に精神を集中させ続けなければこの戦法は成り立たない。相当な修行の下に完成される戦法なのだ。
結論として合わず、未熟な構えをとってしまい、普段よりも多くの隙をさらしてしまっていた。この後『怪物』は三度の深手を受け、敗北した。





「だあああああ!!くそっ、くそが!!!」

『怪物』は荒れながら肉を喰らい、果実を貪る。これらは怪物が特訓のために持ち込んだ食糧だ。喰わねば魔力も回復しないし、傷も治らない。そのために怒りながら暴食を貪っていた。
彼の体に傷は無い。ハルペーによる回復阻害はハルペーが消失すると効果を失う。本家のZeroランサーの宝具による回復阻害の効果も、宝具の消失と共に無くなっていた。それと同じである。
そのため先ほどから食っては戦い食っては戦いを繰り返している。むしろ食べるだけで次の戦いができるほど回復できるその回復能力はなんなのだろうか。

「・・・くそ。やっぱつええなあの野郎。あれもだめ、これもだめときやがった」

実のところ、彼はすでに6度の敗北を喫している。あれから三度戦ったが、その全てが惨敗だ。
手を変え品を変え、考えられる方法を試してみたが失敗の連続だ。どうしたものかと考え込む。

もし仮に、他の英霊がいたのなら、そう手こずることは無かっただろう。
気のいい海賊がいたのなら、自分の戦法を教えていただろう。
戦争好きな交渉人がいたのなら、口八丁で彼を前に進めていただろう。
自信満々な不死の女性がいたのなら、改造して強くなることを提案していただろう。
似た苦しみを味わった建築家なら、共に対策を悩んでくれただろう。
傲岸不遜で自信過剰な『怪物』ではあるが、カルデア内にはいくつかの絆を育んでいる。
彼が強くなりたいと願ったとして、それに応える者は少なからず存在する。それこそ、同じ怪物の仲間が手を貸してくれる可能性は高いだろう。

だが―――怪物は、誰かに頼ろうなんて考えもしていなかった。

生前が孤独に等しく、頼ることに慣れていないというのはたしかにある。
しかしそれを思いついたとしても、誰かに言われたとしても彼は一人で特訓を始めただろう。それが人であれ、怪物であれ、彼は誰の手助けも受けるつもりはなかった。

彼が胸の内に掲げる自分の在りかたは、『孤高の怪物』であったからだ。

仲間を得ることもあるだろう。群れを持つこともあるだろう。つがいを持ち、子を成すこともあるだろう。
だがその身は、戦場では常に一人。ただ一体の怪物となり、その暴威を持って君臨する。
単独で謀略を粉砕し、単身で罠を踏破し、個にして軍を打ち破る。それこそが怪物であると。恐怖名高き怪物なのであると。

故に『怪物』はその在りかたをもって、その生涯を送った。未だなお、それは何一つとして変わっていない。
このトレーニングルームも、一つを貸切って(調整中の張り紙を職員に張らせた)誰も入ってこれないようにしている。ここはお人よしが多すぎる、と、『怪物』は鼻で笑う。

だからこそ、彼は一人で悩んでいる。誰の邪魔も入らない状況で、ただ一人、自分の試練に立ち向かっている。

「ちっ・・・半身。お前の調子はどうだよ」

そう言って彼は自分の半身である黄金の剣を見る。生まれた時から共にある、分かたれることのない半身を。その輝きに褪せは無く、信頼に足る刀身が瞳に映る。
そして、見た。『怪物』は見た。剣に映る、自分の顔を。

「・・・はっ、馬鹿野郎が!!!」

ゴッ!!という音を立て、突如『怪物』は己の顔面をぶん殴った。怪力スキルを使ってまで、思いっきり。
『怪物』の鼻からぼたぼたと鼻血が落ちる。彼はそれを拭い去ると、いつものように不敵に笑った。

「んだよ、なんだ今のなさけねぇ顔は。俺らしくもねぇ。ぁあ!!俺らしくねぇ!!!」

その眼は闘志に満ちている。確かに、彼には怯えがあったのだ。
母を殺した大英雄。危険な宝具。苦手な戦法。いくつもの不利が彼を貶め、臆病にさせていた。
だが、らしくないと怪物は笑う。そうだ、それがどうした。何を迷ってやがる。
怪物はいつでも、全力で相手をねじ伏せるのみ。だから、

「次だ!!次きやがれ!!俺様が勝つ!!」

『怪物』は高らかに、そう言い放った。





『疑似サーヴァント、ペルセウス。召喚します。・・・召喚完了。これより、戦闘訓練を開始します』

その宣言と共に、部屋に重圧が満ちる。この気配に、以前の怪物は飲まれていた。

「ようペルセウス。さっきから悪いな」

だが『怪物』は構えもせず、ただ突っ立ていた。そして返事がないと分かっているのに、言葉を紡ぐ。
疑似サーヴァントに精神はない。話しかけることに意味は無い。だからこれは、宣言だ。

「俺らしくない戦いをした。つまんなかったろ。だからな・・・」

そしてようやく構えをとる。自身の影に刀身を隠す、彼おなじみの突撃の構えを。

「―――今からぶっ殺してやるよ」

ヒュッ!

宣言と共に風切り音が聞こえてくる。それを、

「―――はっ」

『怪物』は、避けた。

寸でのところをステップで避けた。構えに崩れは無く、その態度は余裕そのものだ。

彼は今冷静になっている―――訳ではない。むしろ逆だ。強い闘志で熱く、煮えたぎっている。
それこそが、彼の『動』の真骨頂だ。怒り、たぎるほどに強さを増す。これまで散発的に散っていた熱が、今は全身に満ちている。
筋肉に緊張はなく、感覚も鋭敏になっている。だからこそ、風切り音を聞いてから躱すことができた。これが彼の本調子である。

だが、まだ足りない。もっと上へ、もっと高みへ!!そう願い、高ぶり、『怪物』の精神はさらに高揚していく。

そして2撃目が飛来する。今度は―――避けない。

「・・・グルル・・・」

腰が切り裂かれ、血が溢れる。だが意にも介さない。感じていたのは別のこと。
攻撃の音、気配、それから漏れ落ちる、全て。

そして、3撃目。

―――キィン!

高い音が鳴り、『怪物』のほほが切り裂かれる。鮮血を垂らしながら、『怪物』は、笑う。

「はは、ははははは!!おいおい!手加減してたのかよ!かすっちまったぞおい!!」

一撃、確かに攻撃にかすめた。さきほど感じた分もあるのだろう。だがそもそも、これまで何発、何十発くらっているというのだろうか。
その経験が、感覚が、今たぎっているその全てが、彼を確かに躍進させていた。

サーヴァントは成長しない。
疑似的な肉体を得ている彼らは肉体的な成長をしない。とれだけ鍛えようと、食べようと、その体型も筋肉も、召喚時から変動することは無い。

だが、精神は、経験は別物だ。

『怪物』は、成長するサーヴァントの一体だ。彼の伝承は無い。戦いも、試練も、彼はまるで経験をしていない。
だからこそ、戦いの経験は彼の成長に飛躍的な効果を与える。

シュッ!キィン!!

4撃目。またかすった。

ヒュッ!ガン!!

5撃目。打ち合った。

シャッ!ギィン!!

6撃目。弾いた。

「んじゃぁ・・・次で終わりだ」

『怪物』はそう言い、構え直す。なぜだかわからないが、今の彼には確信があった。

7撃目。アサシンは渾身の一撃を放った。速度も、勢いも、これまでの比ではない。

ギィイイイン!!

それを―――止めた。止められた。

音に反応しただけでなら、遅い。速度の乗った一撃なら、後出しで放たれた攻撃は弾くまでしか届かない。
しかし、止めた。タイミングが合っていなければ、止めるところまでたどり着かない。つまりこれは、気配を消し、マントで姿を隠したアサシンの一撃を、読んでいたということになる。
そして止めたのならば、剣越しに伝わる感覚から武器の向きが、武器の向きからどこにいるのかを逆算できる。ついに、捉えた。

「のがさねェよ!!」

アサシンの居場所を睨んだ『怪物』の目が鈍く光る。『怪物』のスキル、魔眼だ。
だがこれは動きを鈍らせるまでしかいかない。それに発動時にはわずかな隙ができるし、対魔力等の抵抗能力によって打ち消されてしまうものでもある。故に母親から貰った一番好きな力でありながら、このスキルを使うことは少なかった。
『怪物』はアサシンに対魔力は、抵抗能力は無いと確信していた。理由は感だ。だが確信させるものがあった。

『怪物』は駆けた。待ちに待った時である。一度願った仇である。

『怪物』は生まれた直後から、仇を討つことを決めていた。誕生から成体であり、完成された肉体を持つ彼は生まれた時から強かった。
だが、それでは仇に、ペルセウスに勝てないとも確信していた。故にこそ、怪物はただ鍛え続けた。いつか仇を討つために。
そして充分に成長し、勝てる見込みを持ったうえで仇を探した時―――もう全ては終わっていた。

長命種である彼と人間のペルセウスでは、時間の感覚が違う。彼からしてみれば短い時間は、人間が一生を終えるには十分すぎる時間だった。

『怪物』は目的を失った。以降はただ巣にこもり、力をつけながら狩りをして、食事がないときに家畜を浚う程度の日々を過ごした。

そして死後、座に至った『怪物』を待ち受けていたのは、残酷な現実であった。
偉大な怪物である母の下に生まれながら、暴虐も名も残せず、あろうことか、何者かに勝手にエキドナの父親にされていたことだ。
『怪物』は激怒した。記録を捻じ曲げた何者かに、何もしていなかった自分自身に。

怪物の願いは『自身の怪物譚の作成』になった。歴史を変える願いだ。大概にして叶わない。
だからこそ、怪物は時を待った。願いを叶えるその時を。

そして、時は来た。人類史の滅却。これだ、と、『怪物』は歓喜した。
人類史があやふやなタイミングであれば、改ざんの余地はある。今しかないと、怪物は歓喜した。
同時に、怯えた。今のままでは改ざん前に人類史が消滅してしまう。それは困ると、『怪物』はその招集に答えた。

そうして今、疑似とはいえ仇が目の前にいる。願って殺せなった、仇が。

そして、『怪物』は、クリュサオルは吠える。

「―――邪魔だ!!!」

だが邪魔だと、怪物は言い放った。
生前得られなかった戦いが、目の前にある。だから、いつまでも居座って邪魔をしているんじゃないと、怪物は断言した。

もう彼の目には怯えも、迷いも、怒りも、ありはしない。

そして振りぬかれた一刀のもとに―――この戦いは終了した。





『・・・アサシンの消滅をかく』
「おっしゃあああああああああ!!!!」

職員の言葉をかき消すように、『怪物』は雄叫びを上げた。
それでも、苦戦した相手である。その喜びはひとしおだ。
職員もおもわず涙を浮かべている。『怪物』に拉致され、特訓に付き合わされた時はどうしようかと思ったが、それでも彼の苦難を見とどけてきたのである。
そしてこれで終わりかと、彼は席を立つ。しばらく不在にしたことをセージさんになんて言おうかと考えて、

「よっしゃあもう一回だ!またセイバーもってこい!!」

その発言に、凍りついた。

『ええ!?まだやるんですか!?』
「当たり前だ!!今のは奴に慣れただけなんだよ!!同じことを他のやつでも出来なきゃ意味ねーンだよ!!」
『そ、それはそうですが・・・』
「・・・決めた。おい、他のサーヴァントどものデータも持ってこい!!片っ端からやんぞ!!」
『えええええええええええ!?!?』

職員の驚きと嘆きの声が響く。この後『怪物』は、100戦を終えて、ようやく満足したという・・・。

このページへのコメント

作成お疲れさまでした!
流石癒し系同胞、かっこよかった。
今度からは神性を感じるで死なないで済みそうでよかった!

0
Posted by 狂兵・災獣 2016年08月22日(月) 00:45:03 返信

すごいかっこよかったです!
怪物さんマジ怪物……!見ない間にこんなことをしていたとは……。
もう怪物ダインとは呼ばせない……!

0
Posted by 暗兵・盛衰 2016年08月22日(月) 00:23:47 返信

作成お疲れ様でした!
孤高のまま足掻いて見せた姿、私は嫌いじゃないです!

0
Posted by 復讐・写真 2016年08月21日(日) 21:47:21 返信

怪物君は不屈、最後にはペルセウスにも打ち勝ってみせた。彼のかっこいい姿を見た気がします。
後このシステム便利そうだなって。

0
Posted by 魔兵・不死♀(中立・中庸) 2016年08月21日(日) 21:38:41 返信

このシステムすごい使いたい。

怪物君マジ怪物。
かっこいいぜ!

0
Posted by 調停・交渉♂(秩序・善) 2016年08月21日(日) 21:33:45 返信

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