刀匠の語る夫婦剣・干将莫那


「干将と莫那というのはな、俺と妻の名であり、俺の最高傑作の剣の銘だ。」

「二振りで一対のまあ、いわば双剣でそのうちの雄剣の銘が干将で、雌剣の銘が莫那だ。」

「で、こいつを作った経緯だが、大陸に名を馳せる刀匠であった俺に時の王が剣の作成を依頼したという面白みのない経緯だ。
 俺はその依頼を受け、3年の月日をかけて干将と莫那を作り上げた。が、まあ3年だ。時間をかけすぎた。」

「王はかんかんに怒っていて、素直に剣を渡そうとも俺が処刑されるのは目に見えていた。」

「だから俺は二振りの剣のうち、干将を隠して妊娠していた妻に隠し場所を教え、
 生まれてくる子供が男だったのなら、子が大きくなったらその場所を教えるように頼んだ。」

「そして俺は王に残った莫那のみを渡し、より激怒した王に処刑されたってわけだ。」

「そのあとはまあ、いろいろあって俺を処刑した王は死に、俺の息子も死んだ。ただそれだけだ。」

「俺の伝説と剣についてはそんなもんだ。
 悲劇でも喜劇でもない、つまらん話だっただろう?」

「英雄は華々しい活躍ばかりじゃないんだ、こういった話もあるさ。
 分かったら、今度はもっと面白い奴の話を聞くといい。」

「それでも俺の話が聞きたいというなら、そうだな。
 今度は剣の制作にかけた3年間の話でもしてやろう。」


刀匠の語る夫婦剣・干将莫那 -終-

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