「ふぅ…」
サーヴァントたちに支給されたカルデアの一室にて、とある少女がベットに腰かけ、ため息をついている。
彼女はランサーのクラスで召喚され、周囲から雪霞と呼ばれる少女であり
真名を「姫柊雪菜」という。

「そっか、そういえば別世界に呼ばれるのって二度目なんだ」
彼女は先ほどまで兎耳と呼ばれる英霊に誘われ他の英霊たちと井戸端会議に参加していたのだが(兎耳の井戸端会議第三話を参照)
その時、軽くだが口にした別世界での戦い。あの時は自然と口に出していたが、正直に言えばあの時まで彼女はそのことを忘れていた。

「うん、だんだんと思いだしてきた。あの世界でのことを」
どういうわけか忘却していたあの世界での記憶が、あの井戸端会議をきっかけに少しずつ思いだしてきていた。
黒衣の剣士、炎髪灼眼の討ち手、金髪のバーテンダー…そのほかにも、あの世界で自分と同じように呼ばれた
異世界の人たちと出会い、時に戦い、時に協力をしあいながら、あの世界を救い出したのだ

「…先輩も来ていた時には驚いたなぁ」
あの時、監視対象であり自身が先輩と慕う第四真祖の少年も彼女と同様に巻き込まれており
あの世界で合流した時には驚きながらもお互いの無事と再会を喜び合った。
…見知らぬ女の子と行動を共にしてたと知った時にはむっと来たが。

そこまで考えた時、彼女はベットに寝ころび左手の薬指にはめられた指輪を見つめ始める。
これは、雪霞狼の副作用を抑えるべく第四真祖の骨から作られたもの。
とある戦いの前に第四真祖の手ではめられた指輪を見るたびに彼女はその時の事を思い出し
顔を赤くする。しかし、それも一瞬の事ですぐに寂しそうな、そして悲しそうな顔に変わっていく。
「でも、その先輩も今回はいない。本当に、私一人だけ…」

初めて会った時から常に行動を共にし、一緒に事件や異変を解決へと導いていった先輩はここにはいない
そのことを思うと胸が苦しく、切なくなっていく。
それと同時に、知り合いがいないという寂しさが彼女に押し寄せてくる。
親友が、仲間が、知り合いがいるあの島に帰りたい。
あの人の隣に戻りたいという気持ちがあふれ、涙が流れそうになる。…しかし

「ここを、放っていくわけにもいかないよね。」
偶然とはいえ一つの世界の危機を回避するべく召喚された以上見過ごすわけにはいかないだろう
目をそらしてあの日常へ帰ることは彼女の良心が許さない。
それに、仮にあの人が知ったらこの戦いに参加しようとするだろう。面倒くさそうにしながらも
正義感の高い、優しい人だから

「…先輩、待っていてください。この戦いを終わらせて、必ず帰ってきますから。」
故に彼女は腕で目元を隠し、涙をこらえ再び決意する。別世界の人理焼却を防ぐ戦いに参加することを
胸を張って、あの人の元へ帰れるように…
                                                 ―――終わり

このページへのコメント

やっぱり独白があるとキャラの心情がつかめていいね
古城のいないケンカだけど是非とも頑張ってほしいところ

幕間書くの大変だったでしょうが面白かったです、お疲れ様でした

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Posted by 魔兵・兎耳♀ 2016年08月22日(月) 06:55:13 返信

一緒に頑張ろうな雪霞!

原作があるキャラのロール、心情、難しいと思います。
それでも彼女の想いが伝わってきました。

楽しく読ませていただきました。

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Posted by 調停・交渉♀ 2016年08月22日(月) 05:35:41 返信

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