男は言う『強くなりたい』と。

男は願う『かつての英雄たちを目指す』と。

その眼前に立つは一人の男―――――――『ロストグラウンドの悪魔』。

意地と拳をぶつけ合い。

男は『真』を目指す。

右へ左へ、『道』を行く。

                                      《真贋》



<失地>「肩慣らしに付き合ってくれ?」

発端はこの一言だった。

<軽説>「ああ、このままじゃ駄目なんだ。…いざって時に潰れてしまう」

前回の特異点を思い返すと…カプサバ化していたとはいえ、自身の力量不足を痛感した。

『一応は』普通の高校生…なのだが。

紙面の上のヒーローたちに憧れていた時期があり、体を鍛えていた事もある。

ただ『訓練』と『実戦』は違う。

それがイヤというほど身にしみたのだ。

そのため『ケンカ』という形で実戦を知っている彼―――――――【狂兵・失地】に手合わせを頼んだのだ。

まあ、何故彼を選んだかといえばただ近くにいた…というだけなのだが。

<失地>「んで、俺は何をすりゃいい―――――って聞くまでもねぇか」

獰猛な笑みを浮かべ、右腕を天高く掲げる狂兵。

人差し指、中指、薬指、小指の順に手の内側へ折りたたみ――――――最後に親指を内側にたたむ。

瞬間、周囲の物体が『分解』され、狂兵自身の右腕に纏うように『再構成』される。

使用者のエゴによって強さが変わる力、精神感応性物質変換能力――――――――――――――アルター。

彼の元となった人物が持つ、たった一つの『自慢の拳(ほうぐ)』――――――――――――シェルブリット。

<軽説>「ああ――――――『義肢開放』」

弓兵の右腕と右足の人工皮膚が焼け、剥がれ落ちていく。

左目の瞳、その内部が展開し幾何学的な模様が生まれる。

憧れのヒーローの一人、その姿を『真似る』。

この身は贋作、この魂は真作。

真贋入り混じった英霊―――――――それが俺だ。

だが、これだけで終わってたまるか。

たとえ贋作でも、真に迫ってみせる。

<軽説>「ここからは――――――――」
<失地>「ここからは――――――――」

俺たちのケンカだ。

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