最終更新:ID:ABFOAWHsGw 2016年08月21日(日) 16:05:46履歴
ーー夢を見ていた。
私がいて、私の大切な人がいた、あの時の夢。
そこは笑顔で溢れていて、とても暖かくて、とても大切だった場所。
でも、その場所はもうなくて、だから私は・・・、彼は・・・、皆は・・・。
「んぅ」
意識が戻る。
目を開ければ、もうかつての幸せはない。
これから待ち受けているのは、とても苦しく、辛い現実。
だけど、諦めないで。
自分を、自分の信じる人たちを最後まで信じ抜いてください。
■■■■は、貴女のことを応援してますよ。
満月の夜、されど月は厚い雲に隠され、街灯のない大地は漆黒に染まっている。
その大地に、おびただしい数の軍勢が列を乱すことなく並び、今か今かと出陣の触れを待ち望んでいた。
その中心に、1人の男が立っている。
モノクルを掛けた、紳士然とした男だ。
「さて、我々は先陣を任された。この意味がわかるかね。」
そう、周囲に問いかける。しかし反応を返すものはいない。
なぜならその軍勢に意思はなく、ただ破壊するための人形でしかないのだから。
「そうさ、つまり我々に真っ先に征服しろ、ということだ。奴らを蹂躙しろということだ。」
そう言うと、男はさながら演劇のように、仰々しく敵の城を指さした。
「さぁ、征服だ略奪だ蹂躙だ!我らコンキスタドールの名の元に・・・!!!」
男の足元から巨大な船が出現する。その船が模しているのは、蛇神。
「さぁ、進め!」
そういうと、兵士たちも進み始める。前へひたすらに前へ。彼の命令通り、敵を征服するために。
「おうおうおうおう、元気いいじゃねぇか。こりゃあこっちも燃えてきたぜ。」
城門の上にたっているとある男はタバコを吸いながら、攻め寄せる敵軍を見て、楽しそうに笑う。
「我々の目的はここを守ることです。くれぐれも深追いはしないように。」
その男の隣には軍服を着た1人の女性、目の前でタバコを吸う男を不快そうに横目で見ながら、それでも戦場を見据えている。
「一番深追いしそうなやつに言われてもなぁ。」
「何か言いましたか?ライダー。それとも貴方をあの敵陣に投げ込み囮にしましょうか?」
彼の言葉に、彼女は眉にシワを寄せて反論する。戦場とは思えないほどの、気軽なやり取り。今のやり取りをしながら互いにメンチを切りあっている。
『ちょっとお二人共!喧嘩はやめてください!ズドンしますよ!』
「「やめろ(やめてください)」」
使い魔から聞こえた声に思わず声を揃えて反応する。
「たく、味方にやられるとか冗談じゃねぇぞ。」
そう言うとライダーと呼ばれた男は腰に指していた剣を正面に構える。
「野郎共!このままだと俺達ゃフレンドリーファイアで死んじまう。そんなの本意じゃねぇよなぁ!!」
その言葉に対し、どこからから声が上がる。
「美人に撃たれるなら本望でさぁ!」
「俺はむしろバーサーカーの姐さんに・・・。」
「ルーラー姐さんいいよね・・・。」
「いい・・・。」
「妖姫ちゃん可愛いヤッター!!」
どこまでも楽しそうな声、まるで酒場にでもいるかのような陽気なノリ。
「てめぇら!次変な事言ったら先に俺が殺すぞ!!そういうのは終わった後、宴会の席でやれ!」
男がそう怒鳴ると、その陽気な声たちは一斉に気を引き締める。
されど、その顔にあるのは喜悦、これから始まる戦闘への興奮。
「さぁ!あいつらに目に物見せてやろうぜ!俺達海賊の力をよぉ!!」
男がそう告げると
「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
歓声とともに海賊船が出現する。その船が示すのは、狂犬。
「行くぞてめぇら!ヴァイタリエンブリューダ、出陣だ!!」
その声と同時に、城門で会話していた2人も船に乗り込み、こちらへ向かってくる敵へと進路を取る。
ここに、両者が激突する。
先に仕掛けたのは赤の陣営。
宙に浮いた海賊船を走らせ、敵陣へと切り込んでいく。
意思のない、破壊しかできない人形たちが次々に船に轢き殺されていく。
「はっ、なんだよ。張合いがねぇ。どいつもこいつも木偶人形じゃねぇか。」
男、黒のライダーは不満を顔に表す。
サーヴァント同士の喧嘩だと、血湧き肉躍る戦いだと思っていたのに、なんだこれは。
何の面白みもない。
これではキャスターに頼んで船を改造してもらった甲斐も無い。
「そうは思わねぇか、バーサーカー・・・ってあいつどこいった!?」
黒のライダーが横を向くとそこに、先程までいた女性の姿はない。
思わず船員の方に目を向ける。
「姐さんならさっき船飛び降りて、敵陣に突っ込んできましたよ!」
船員のひとりがそう告げる。
黒のライダーは思わず頭を抱えた。
「結局独断専行してんじゃねぇかあの馬鹿・・・!」
黒のバーサーカーにとっての敵とは、家族を奪う存在だ。
そして、彼女にとっての家族とは自分の仲間達にほかならない。
いけ好かないライダーも、ちょっと頭おかしいアーチャーも、地味なランサーも、天真爛漫なセイバーも、顔芸の凄いキャスターも、そして今ここにいないアサシンさえも。
そうだ、目の間に広がる存在はすべて敵だ。
だから、殺す。殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺し尽くす。
「■■■■■■■ーーーー!!!」
彼女は会話は可能であるが、狂化しているバーサーカーである。
そしてその力は、意思のない人形など一蹴する。
彼女が通った道の後には何も残らない。
「■■■■■■■ーーーーー!!!」
そして、意思のないはずの人形たちが彼女に道を譲るかのように、次々と消えていく。
まるで恐怖を感じているかのように、気圧されているかのように。
「控えめに言って頭おかしいですねあれ。」
そうつぶやくのは黒のアーチャーだ。
彼女は城に存在する物見の上から援護射撃をする手はずとなっていた。
しかし、あれでは撃った直後にバーサーカー諸共吹き飛ばしてしまうだろう。
「ライダーさんは何やってるんですかね。ちゃんと止めてくれないと援護も何も無いでしょうに。」
戦場を冷静に俯瞰する。
彼女は生前、戦場に立つ人間ではなかった。
しかし今はあくまで冷静に戦場を見据える。
かつて祈りを捧げていた、あの時と同じような気持ちで。
だからこそ、その異常に気がついた。
「!?」
黒のバーサーカーの周りから不自然に敵が消えている。
そしてーーーーー。
「皆さん!空に誰かがいます!!!」
彼女はそう言うと走り出す。
己のすべきことをするために、己にしかできないことをするために・・・・・・。
黒のアーチャーから忠告を受けた黒のライダー、黒のバーサーカーは空を見上げる。
そこには・・・。
「ふ、ふふふふふふはははははははは!!!!!!!!人間っ!最高っ!!!」
男(馬鹿)がいた。
「これこそが人の輝き・・・!意思なき木偶人形共を破壊するその力・・・!人間って素晴らしい!ばんざぁい!!おお、ばんさぁい!!!」
その男は空中で両手を挙げて万歳を称えている。
その顔はどこまでも感動に満ちていて、目の前の現実に絶頂すらしているようだ。
『さて、一通り満足したかね、バーサーカー。そして理解したか、ここは君にとっての舞台であることを。』
使い魔を通して声がする。
自分のような兵器を呼び寄せ、そして活躍する舞台を、感動する舞台を与えてくれるといった男の声。
「ああ、ああ理解した。ここが、俺にとっての大舞台だ。ここまで用意してくれたこと、感謝する。」
『なに、気にすることは無い。それが私と君の契約だ。そして・・・。』
「ああ、あとは俺に任せろ。」
そう言うと男、赤のバーサーカーは己の腕にある令呪を光らせ、己に命じる。
「さぁ、我が宝具を使うぞ!!全ての人間が恐怖した我が力、耐えて見せよ、防いで見せよ!人の輝きを俺にみせてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」
今から見せるは人間による神話の再現,我は死神,我は世界の破壊者なり!!!
ーーー灰降る世界(カタストロフィ)!
それは人を殺す世界。
全ての生物がいずれ死に絶える世界。
そして、その世界が降り注ぐという事は。
「くそっ!やべえぞあれ!!」
黒のライダーが思わず声を荒らげる。
「ーーーーーーー」
黒のバーサーカーはただ、空を見上げるだけだ。
訪れる死、誰もが死を覚悟した瞬間。
「ーーお待たせしました!」
聖女が戦場に降臨する。
黒のアーチャーは理解していた。
あの世界を防ぎきり、破壊できるのは自分をしかいないと。
それこそが自分の使命であると・・・!
「我が堅牢なる塔よ、ここに!」
そう彼女が言うと、世界を分断するように塔が出現する。
そしてその塔は恐るべきことに赤のバーサーカーの世界を受け止める。
「止めた、でも・・・!!」
しかし、その程度では止まらない。
赤のバーサーカーの宝具は死という概念、死をもたらす世界。
いくら彼女の塔が堅牢であろうとも、それを防ぎきる事はできない。
だからーーーー!
「私の宝具で、すべてを吹き飛ばします・・・!!ルーラーさん!」
彼女がそういうとどこからか、声が響く。
『ルーラーの私が命じます。黒のアーチャー、赤のバーサーカーの宝具を防ぎきりなさい。そして重ねて命じます。貴女の宝具を持って、我々に勝利を・・・!!』
その声とともに、黒のアーチャーに力が宿る。
令呪による強化、そして、2画重ねられたその力は、あらゆる障害を消し飛ばす力になる。
「行きます!」
三位一体の理をここに示す。
ーーー『天雷、ここに敵を討て(アギアヴァーヴァラ)』!!!
塔が消えるとともに、巨大な砲が現れる。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
彼女の叫びとともに、魔力の砲弾が赤のバーサーカーの世界へと向かい発射される。
これが通常であれば、出力の差で黒のアーチャーは押し負けるだろう。
しかし今の彼女の力は、祈りは、死の暴威になど負けはしない。
激突、死の世界と、愛の祈りが互いにぶつかり合う。
巨大な閃光と爆音が戦場を包む。
それはどこか幻想的な光景でーーーー。
静寂、不似合いな沈黙が戦場を包み込んでいる。
「おい!アーチャー!!」
黒のライダーは、まっさきに黒のアーチャーのところに駆け寄る。あれだけの力の行使、令呪の力を借りているとはいえ、その代償は小さくない。
「あ、はは、気持ちのいいズドンでしたよ?」
そう力なく笑う彼女は、満足気で。
されど、見失えばそのまま消えてしまいそうで。
そんな二人の前に、一人の男が現れる。
「ああ、実に見事であった。まさか我が渾身の力を防ぎ切るとは。」
何事も無かったかのように、友に話しかけるように、そう話しかける。
「テメェ!赤のバーサーカー!」
そこに来たのは先程、あれだけの力を使った赤のバーサーカー。
無論、黒のライダーは警戒する。
まだ余力が残っている可能性もある。
しかし。
「純粋な賛辞だ。そして私はもう消える。そこの女と同様にな。」
「ッ!」
黒のライダーは息を呑む。しかし事実だ。
先程からどんどんと黒のアーチャーの力が弱くなっているのを感じる。
「私は、感謝している。あの男と、そして私に輝きを見せてくれたお前達に。」
赤のバーサーカーは満足気な顔で続ける。
「だからこその忠告だ。あの男は、もうお前達の知る存在ではない。そして、お前達が失ったものに気が付かぬままでは、勝つことは出来ない。」
「一言アドバイスを送るとするのならば、『復讐者』と触れ合うことだ。彼女を知ることだ。彼女が、この世界を救う鍵になる。」
そう言うと、彼は消滅していく。
満ち足りた笑顔で、こう、最後に告げた。
「人の輝きとは、真に尊いものだったのだな。うん、実に満足だ。」
最後まで、その笑顔を絶やすことなく、消えていった。
そして、
「私も限界ですね・・・。」
黒のアーチャーにも、最後の時が訪れる。
「・・・・・・・・・!」
「あはは、そんな顔しないでください。いつもみたいに、笑って見送ってくださいよ。」
黒のライダーは苦虫をかみ潰したような顔で、黒のアーチャーを見る。
そして黒のアーチャーは、どこまでも晴れやかな笑顔だ。
「赤のバーサーカーの言葉、考えてみる価値はあると思います。彼と互いをぶつけあって、分かりました。やっぱり、私たちと彼らは、同じなんだなって。」
「だから、私は先に行きますけど、皆さんのことを祈ってます。あの塔の中で、ずっと、ずっと。」
そう言うと、徐々に消滅していく。
そして、思い出したかのように黒のライダーにこう言葉を残した。
「セイバーちゃんに謝っておいてください。お茶する約束、破っちゃいました。」
そう悲しそうに笑うと、彼女もまた、消滅した。
誰よりも優しく、誰よりもその力を誰かのために使うことを厭わなかった。
黒のアーチャーは消えた・・・。
ーーー
「・・・・・・・・・・・・、野郎共、イカリをあげろ。」
そう、静かに黒のライダーが告げる。
「弔い合戦だ。この戦いに勝って、宴であいつのことを笑って話そう。」
あくまで冷静に、今すべきことを考え、そして実行するのだ。
「いくぞ、大切なダチを奪った奴らを許すな!!」
オオオオオオオオオオオオ!!!!!
大きな歓声とともに、友を奪われた狂犬が唸りをあげる。
そして戦場は、再び動き出す。
next.「錯綜する想い」
私がいて、私の大切な人がいた、あの時の夢。
そこは笑顔で溢れていて、とても暖かくて、とても大切だった場所。
でも、その場所はもうなくて、だから私は・・・、彼は・・・、皆は・・・。
「んぅ」
意識が戻る。
目を開ければ、もうかつての幸せはない。
これから待ち受けているのは、とても苦しく、辛い現実。
だけど、諦めないで。
自分を、自分の信じる人たちを最後まで信じ抜いてください。
■■■■は、貴女のことを応援してますよ。
満月の夜、されど月は厚い雲に隠され、街灯のない大地は漆黒に染まっている。
その大地に、おびただしい数の軍勢が列を乱すことなく並び、今か今かと出陣の触れを待ち望んでいた。
その中心に、1人の男が立っている。
モノクルを掛けた、紳士然とした男だ。
「さて、我々は先陣を任された。この意味がわかるかね。」
そう、周囲に問いかける。しかし反応を返すものはいない。
なぜならその軍勢に意思はなく、ただ破壊するための人形でしかないのだから。
「そうさ、つまり我々に真っ先に征服しろ、ということだ。奴らを蹂躙しろということだ。」
そう言うと、男はさながら演劇のように、仰々しく敵の城を指さした。
「さぁ、征服だ略奪だ蹂躙だ!我らコンキスタドールの名の元に・・・!!!」
男の足元から巨大な船が出現する。その船が模しているのは、蛇神。
「さぁ、進め!」
そういうと、兵士たちも進み始める。前へひたすらに前へ。彼の命令通り、敵を征服するために。
「おうおうおうおう、元気いいじゃねぇか。こりゃあこっちも燃えてきたぜ。」
城門の上にたっているとある男はタバコを吸いながら、攻め寄せる敵軍を見て、楽しそうに笑う。
「我々の目的はここを守ることです。くれぐれも深追いはしないように。」
その男の隣には軍服を着た1人の女性、目の前でタバコを吸う男を不快そうに横目で見ながら、それでも戦場を見据えている。
「一番深追いしそうなやつに言われてもなぁ。」
「何か言いましたか?ライダー。それとも貴方をあの敵陣に投げ込み囮にしましょうか?」
彼の言葉に、彼女は眉にシワを寄せて反論する。戦場とは思えないほどの、気軽なやり取り。今のやり取りをしながら互いにメンチを切りあっている。
『ちょっとお二人共!喧嘩はやめてください!ズドンしますよ!』
「「やめろ(やめてください)」」
使い魔から聞こえた声に思わず声を揃えて反応する。
「たく、味方にやられるとか冗談じゃねぇぞ。」
そう言うとライダーと呼ばれた男は腰に指していた剣を正面に構える。
「野郎共!このままだと俺達ゃフレンドリーファイアで死んじまう。そんなの本意じゃねぇよなぁ!!」
その言葉に対し、どこからから声が上がる。
「美人に撃たれるなら本望でさぁ!」
「俺はむしろバーサーカーの姐さんに・・・。」
「ルーラー姐さんいいよね・・・。」
「いい・・・。」
「妖姫ちゃん可愛いヤッター!!」
どこまでも楽しそうな声、まるで酒場にでもいるかのような陽気なノリ。
「てめぇら!次変な事言ったら先に俺が殺すぞ!!そういうのは終わった後、宴会の席でやれ!」
男がそう怒鳴ると、その陽気な声たちは一斉に気を引き締める。
されど、その顔にあるのは喜悦、これから始まる戦闘への興奮。
「さぁ!あいつらに目に物見せてやろうぜ!俺達海賊の力をよぉ!!」
男がそう告げると
「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
歓声とともに海賊船が出現する。その船が示すのは、狂犬。
「行くぞてめぇら!ヴァイタリエンブリューダ、出陣だ!!」
その声と同時に、城門で会話していた2人も船に乗り込み、こちらへ向かってくる敵へと進路を取る。
ここに、両者が激突する。
先に仕掛けたのは赤の陣営。
宙に浮いた海賊船を走らせ、敵陣へと切り込んでいく。
意思のない、破壊しかできない人形たちが次々に船に轢き殺されていく。
「はっ、なんだよ。張合いがねぇ。どいつもこいつも木偶人形じゃねぇか。」
男、黒のライダーは不満を顔に表す。
サーヴァント同士の喧嘩だと、血湧き肉躍る戦いだと思っていたのに、なんだこれは。
何の面白みもない。
これではキャスターに頼んで船を改造してもらった甲斐も無い。
「そうは思わねぇか、バーサーカー・・・ってあいつどこいった!?」
黒のライダーが横を向くとそこに、先程までいた女性の姿はない。
思わず船員の方に目を向ける。
「姐さんならさっき船飛び降りて、敵陣に突っ込んできましたよ!」
船員のひとりがそう告げる。
黒のライダーは思わず頭を抱えた。
「結局独断専行してんじゃねぇかあの馬鹿・・・!」
黒のバーサーカーにとっての敵とは、家族を奪う存在だ。
そして、彼女にとっての家族とは自分の仲間達にほかならない。
いけ好かないライダーも、ちょっと頭おかしいアーチャーも、地味なランサーも、天真爛漫なセイバーも、顔芸の凄いキャスターも、そして今ここにいないアサシンさえも。
そうだ、目の間に広がる存在はすべて敵だ。
だから、殺す。殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺し尽くす。
「■■■■■■■ーーーー!!!」
彼女は会話は可能であるが、狂化しているバーサーカーである。
そしてその力は、意思のない人形など一蹴する。
彼女が通った道の後には何も残らない。
「■■■■■■■ーーーーー!!!」
そして、意思のないはずの人形たちが彼女に道を譲るかのように、次々と消えていく。
まるで恐怖を感じているかのように、気圧されているかのように。
「控えめに言って頭おかしいですねあれ。」
そうつぶやくのは黒のアーチャーだ。
彼女は城に存在する物見の上から援護射撃をする手はずとなっていた。
しかし、あれでは撃った直後にバーサーカー諸共吹き飛ばしてしまうだろう。
「ライダーさんは何やってるんですかね。ちゃんと止めてくれないと援護も何も無いでしょうに。」
戦場を冷静に俯瞰する。
彼女は生前、戦場に立つ人間ではなかった。
しかし今はあくまで冷静に戦場を見据える。
かつて祈りを捧げていた、あの時と同じような気持ちで。
だからこそ、その異常に気がついた。
「!?」
黒のバーサーカーの周りから不自然に敵が消えている。
そしてーーーーー。
「皆さん!空に誰かがいます!!!」
彼女はそう言うと走り出す。
己のすべきことをするために、己にしかできないことをするために・・・・・・。
黒のアーチャーから忠告を受けた黒のライダー、黒のバーサーカーは空を見上げる。
そこには・・・。
「ふ、ふふふふふふはははははははは!!!!!!!!人間っ!最高っ!!!」
男(馬鹿)がいた。
「これこそが人の輝き・・・!意思なき木偶人形共を破壊するその力・・・!人間って素晴らしい!ばんざぁい!!おお、ばんさぁい!!!」
その男は空中で両手を挙げて万歳を称えている。
その顔はどこまでも感動に満ちていて、目の前の現実に絶頂すらしているようだ。
『さて、一通り満足したかね、バーサーカー。そして理解したか、ここは君にとっての舞台であることを。』
使い魔を通して声がする。
自分のような兵器を呼び寄せ、そして活躍する舞台を、感動する舞台を与えてくれるといった男の声。
「ああ、ああ理解した。ここが、俺にとっての大舞台だ。ここまで用意してくれたこと、感謝する。」
『なに、気にすることは無い。それが私と君の契約だ。そして・・・。』
「ああ、あとは俺に任せろ。」
そう言うと男、赤のバーサーカーは己の腕にある令呪を光らせ、己に命じる。
「さぁ、我が宝具を使うぞ!!全ての人間が恐怖した我が力、耐えて見せよ、防いで見せよ!人の輝きを俺にみせてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」
今から見せるは人間による神話の再現,我は死神,我は世界の破壊者なり!!!
ーーー灰降る世界(カタストロフィ)!
それは人を殺す世界。
全ての生物がいずれ死に絶える世界。
そして、その世界が降り注ぐという事は。
「くそっ!やべえぞあれ!!」
黒のライダーが思わず声を荒らげる。
「ーーーーーーー」
黒のバーサーカーはただ、空を見上げるだけだ。
訪れる死、誰もが死を覚悟した瞬間。
「ーーお待たせしました!」
聖女が戦場に降臨する。
黒のアーチャーは理解していた。
あの世界を防ぎきり、破壊できるのは自分をしかいないと。
それこそが自分の使命であると・・・!
「我が堅牢なる塔よ、ここに!」
そう彼女が言うと、世界を分断するように塔が出現する。
そしてその塔は恐るべきことに赤のバーサーカーの世界を受け止める。
「止めた、でも・・・!!」
しかし、その程度では止まらない。
赤のバーサーカーの宝具は死という概念、死をもたらす世界。
いくら彼女の塔が堅牢であろうとも、それを防ぎきる事はできない。
だからーーーー!
「私の宝具で、すべてを吹き飛ばします・・・!!ルーラーさん!」
彼女がそういうとどこからか、声が響く。
『ルーラーの私が命じます。黒のアーチャー、赤のバーサーカーの宝具を防ぎきりなさい。そして重ねて命じます。貴女の宝具を持って、我々に勝利を・・・!!』
その声とともに、黒のアーチャーに力が宿る。
令呪による強化、そして、2画重ねられたその力は、あらゆる障害を消し飛ばす力になる。
「行きます!」
三位一体の理をここに示す。
ーーー『天雷、ここに敵を討て(アギアヴァーヴァラ)』!!!
塔が消えるとともに、巨大な砲が現れる。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
彼女の叫びとともに、魔力の砲弾が赤のバーサーカーの世界へと向かい発射される。
これが通常であれば、出力の差で黒のアーチャーは押し負けるだろう。
しかし今の彼女の力は、祈りは、死の暴威になど負けはしない。
激突、死の世界と、愛の祈りが互いにぶつかり合う。
巨大な閃光と爆音が戦場を包む。
それはどこか幻想的な光景でーーーー。
静寂、不似合いな沈黙が戦場を包み込んでいる。
「おい!アーチャー!!」
黒のライダーは、まっさきに黒のアーチャーのところに駆け寄る。あれだけの力の行使、令呪の力を借りているとはいえ、その代償は小さくない。
「あ、はは、気持ちのいいズドンでしたよ?」
そう力なく笑う彼女は、満足気で。
されど、見失えばそのまま消えてしまいそうで。
そんな二人の前に、一人の男が現れる。
「ああ、実に見事であった。まさか我が渾身の力を防ぎ切るとは。」
何事も無かったかのように、友に話しかけるように、そう話しかける。
「テメェ!赤のバーサーカー!」
そこに来たのは先程、あれだけの力を使った赤のバーサーカー。
無論、黒のライダーは警戒する。
まだ余力が残っている可能性もある。
しかし。
「純粋な賛辞だ。そして私はもう消える。そこの女と同様にな。」
「ッ!」
黒のライダーは息を呑む。しかし事実だ。
先程からどんどんと黒のアーチャーの力が弱くなっているのを感じる。
「私は、感謝している。あの男と、そして私に輝きを見せてくれたお前達に。」
赤のバーサーカーは満足気な顔で続ける。
「だからこその忠告だ。あの男は、もうお前達の知る存在ではない。そして、お前達が失ったものに気が付かぬままでは、勝つことは出来ない。」
「一言アドバイスを送るとするのならば、『復讐者』と触れ合うことだ。彼女を知ることだ。彼女が、この世界を救う鍵になる。」
そう言うと、彼は消滅していく。
満ち足りた笑顔で、こう、最後に告げた。
「人の輝きとは、真に尊いものだったのだな。うん、実に満足だ。」
最後まで、その笑顔を絶やすことなく、消えていった。
そして、
「私も限界ですね・・・。」
黒のアーチャーにも、最後の時が訪れる。
「・・・・・・・・・!」
「あはは、そんな顔しないでください。いつもみたいに、笑って見送ってくださいよ。」
黒のライダーは苦虫をかみ潰したような顔で、黒のアーチャーを見る。
そして黒のアーチャーは、どこまでも晴れやかな笑顔だ。
「赤のバーサーカーの言葉、考えてみる価値はあると思います。彼と互いをぶつけあって、分かりました。やっぱり、私たちと彼らは、同じなんだなって。」
「だから、私は先に行きますけど、皆さんのことを祈ってます。あの塔の中で、ずっと、ずっと。」
そう言うと、徐々に消滅していく。
そして、思い出したかのように黒のライダーにこう言葉を残した。
「セイバーちゃんに謝っておいてください。お茶する約束、破っちゃいました。」
そう悲しそうに笑うと、彼女もまた、消滅した。
誰よりも優しく、誰よりもその力を誰かのために使うことを厭わなかった。
黒のアーチャーは消えた・・・。
ーーー
「・・・・・・・・・・・・、野郎共、イカリをあげろ。」
そう、静かに黒のライダーが告げる。
「弔い合戦だ。この戦いに勝って、宴であいつのことを笑って話そう。」
あくまで冷静に、今すべきことを考え、そして実行するのだ。
「いくぞ、大切なダチを奪った奴らを許すな!!」
オオオオオオオオオオオオ!!!!!
大きな歓声とともに、友を奪われた狂犬が唸りをあげる。
そして戦場は、再び動き出す。
next.「錯綜する想い」
このページへのコメント
この戦争どっちが勝つのか・・・そして雷砲さんの宝具がやばい!
狂犬だしていただきありがとうがとうございます!また仲間を守れなかった狂犬がどんな最期を迎えるのか楽しみに待っております。
作成お疲れ様でした!
爆弾殿と雷砲殿が相打ちになりましたか…合戦のほうは黒の陣営がやや押している感じですね。
お互いに脱落者が一人ずつ出て物語も加速していきそうで今後の展開が楽しみです!
偽神の出陣シーンは良かったです!キャラの方向性としてはあんな感じで書いちゃってください!
作成お疲れさまでした!
とりあえず妖姫ちゃん可愛いやったー!って言った奴はTSする呪いをかけるねぇ?
ズドンさんと爆弾さんの見せ場がすごかったです!
まだまだ大変だと思いますが続きを期待しています!!
親友の身にいったい何が!?
これから先の展開に楽しみにしています
両陣営から脱落者が一人ずつ出ましたね、物語もここからさらに加速度的に進んでいくだろうし目が離せません!
バーサーカーの襲撃は乗り切ったがまだまだ油断できない状況の黒の陣営、此処から巻き返すことが出来るか…とっても気になります!!