ーーーとある村

「いやぁ、運が良かったですねー。まさか最寄りの村まで送ってもらえるなんて。」

一人の少女が村に降り立つ。カメラを持ち、その顔に常に笑みを絶やさない少女だ。

「これも私の日頃の行いのおかげ、ってことは無いですねー。割とあくどいことやってますし。」

独り言を呟きながら、村の中央まで歩いていく。

「まあそれでも、あのオジサンには感謝です。目つきエロかったですけどっと、ここですか。」

村の中心にある教会、ここなら神に祈りでも捧げれば1晩泊めてくれるだろう。

「なーんて、罰当たり罰当たり。すいませーん!」


そうして教会に入っていく少女を、離れて観察する影があった。
「みぃつけた!賭けは私の勝ちみたいね、セイバー。」
そう言うとその影はまるでその場に存在しないかのように掻き消えた。



「ふんふふんふーん、まさかこんな村で綺麗なお風呂とまともなご飯にありつけるなんて。」
正直この村の環境の良さは想定外だった。取材をするために世界を回っていれば、劣悪な環境で過ごすことなんてざらである。
そういった観点から見ればこの村は当たりであった。しかし違和感もある。

「なんでこんな辺境の村にこれだけの資源が?」
風の噂でこの国が最近突然力をつけてきたのは知っている。今回はそれの調査も兼ねているのだから。
しかし、こんなどこにでもあるような普通の村がなぜここまで豊かなのか。

「うーん、目的地に行く前に少し調査していくべきでしょうか。」
そう呟いたが、首を振ってその考えを頭から消す。
自分の悪いくせだ。興味が出るとリスクを無視して突撃してしまう。
そのせいで今までとても苦労してきたのだ。今回は目的だけを達成しよう。

ーーー何故かそうしなくちゃいけない気がする。

・・・・・・?一瞬思考が飛んでいた。やはり長旅の疲れもあるのだろうか。
今日はもう寝てしまおう。そうしよう。

その時だった。

ヒュンッ

「!?」
風切り音が耳の横を通り過ぎる。
頬に何かが掠った。血が出ていることがその証明。
一瞬で頭が切り替わる。
何者かに命を狙われてる。そしてその相手は遠距離から攻撃する手段がある。
屋内にいては不味い・・・!!
慌てて荷物を抱え外に飛び出す。
・・・・・・?なぜ、なぜ私はここまで冷静に分析をしている、いや、出来ているの・・・・・・?
そんな疑問が浮かんだ瞬間、

「Добрый вечер.元気?」

そこにいたのは赤い外套をまとった白人の少女。
雪のような白さが、夜の闇に浮かんでいるようだ。

「教会から出てきてくれてよかったよ。流石の私も、主の目の前で人を殺したくはないからね。」

殺すーーーー、確かに彼女はそういった。
何故、何故、何故。疑問が浮かび続ける。
私はただの雑誌記者だ。
そりゃ恨みを買う様な事はしてきたが、殺される謂れはないし、私の存在がバレるようなヘマはしない。

「何が、何が目的なんですか!貴女は!」
そうだ、まず彼女の目的を聞かなくてはならない。

「目的?そんなもの君を殺すことだよ。捕縛とも言われてるけど、殺した方が早いし。」

「何故、私を殺すんですか!」

「なんでってそう言われてるからだけど。」

「それは誰にですか!」

「誰にって、そりゃあ。・・・?危ない危ない。そうそう、こういう手段を使う子だったよね。」

・・・・・・、ダメだった。私の話術が通じない。
しかし、少なくとも何者かの意思で私は命を狙われているらしい。
だったら、私がとる手段は―――!

「取引を、しませんか。」

「取引?」
よし、食いついた!

「そうです!私は、今ここで死ぬわけには行きません。応じてくれれば素直に捕縛されます。」

「・・・・・・、その取引の条件は?」

「貴女が求めている情報、どんな情報であろうとそれを差し上げます。」

勿論ハッタリだ。向こうは私を知っているようだけど、私は彼女を知らない。
そんな相手の知りたい情報なんて、持ってるはずがない。
だけど、取引にさえ乗ってくれれば、このカメラで・・・・・・!

ヒュンッヒュンッ

ザクッ



ーーー?
ーーーーーーーー?
あれ?なんで?
私・・・、なんで、地面に倒れ伏しているんだろう。

「ごめんごめん、話長いからさー。ほら、さっき言ったでしょ?私、あんまり主の前で殺しってしたくないから。」

目の前のおんながナニカイッテイル。

「宝具も使わないみたいだし、歯ごたえなかったニャー。」

くるしい、いたい、つらい。なみだが、ちが、とまらない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「じゃ、Спокойной ночи.!次は仲良くしようね。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いやだ!

いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!

そうだ、私は私はこんなところで死ねない。
私には成すべきことがある。私には乗り越えなくてはならないことがある。
私には・・・、救わなきゃいけない人がいる・・・・・・・・・!!

「私は!私はまだ、死ねない!死なない!死ぬわけにはいかないんだ!!!」
そうだ。
「私は!■■■を!この世界を救わなきゃいけない!!」



「よく言った!その啖呵、見事!この俺、黒のランサーが聞き届けた!!」


――――――?
男性の声がする。聞き覚えがあるような、ないような、そんな声だ。

「ふむ、確かこれを浴びせればいいのだな。そこを動くなよ。」

何かを浴びせられる。
・・・・・・・・・、不思議と身体が楽になった気がする。

「少しそこで待っていろ、あの女を追い払ってくる。」

そう言うと、男らしき声が遠ざかっていく。

―――――――――。
―――ああ、ダメだ。
どうやら先程叫んだせいで体力を使い果たしたらしい。
瞼が重い。身体がだるい。もう思考すら億劫だ。
死にたくないなぁ、目を覚まして起きたら、またあの日常に帰れるかな。
・・・・・・?あの日常ってなんだろう。頭の中がごちゃごちゃしてる。
きもちわるい、あたまがかきまぜられてるみたいに。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ、お休み■■■。




そしてここに、二人の英雄が対峙する。

「で、なーんで邪魔するのかにゃー?黒のランサー。」
ひとりは年若き少女、赤い外套、新雪のように白き肌。
苛立っているのか興奮しているのか、その顔は紅く火照っている。

「しれたこと、幼気な少女を、無抵抗のまま殺す、そのような輩が許せぬからよ。」
ひとりは屈強な大男、中華風の服を身にまとい槍を携えている。
その相貌は、目の前の悪逆に対し怒りに打ち震えている。

「貴様ら、誇りを捨て地に落ちたか!!」
大男が怒号を上げる。
それはただの怒りではなく、失望から、信じていた者からの裏切りからくる怒り。

「なーにをそんなに怒ってるんだか。これが私達でしょ?」
逆に少女は飄々としている。
どこまでも興味なさげに、目の前の現実すら見ていないように。

「ッ!!!もういい、不愉快だ。お前を倒し、彼女を救う。」
男はそう言うと槍を構える。

「あはっ、そうそう。そっちの方がわかりやすいじゃん。」
同じく少女も、嬉しそうに楽しそうに弓を構える。


ここに、長きにわたる聖杯大戦の幕が切って落とされる。
一人の少女と、一人の青年、そして世界を巻き込む大きな戦の前哨戦。
その行く末は・・・。

next 黒のランサーVS赤のアーチャー

このページへのコメント

ねぇよ!全て無慈悲な1発ダイスだよ!
粘れば救援はあるけど!

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Posted by 調停・交渉♂ 2016年08月18日(木) 07:56:49 返信

交渉さん、ダイスには増援判定とかあるんですか?

0
Posted by 弓兵・雷砲♀ (混沌・善)◆oXtRvSXmmU 2016年08月18日(木) 03:04:25 返信

あらゆるキャラがダイスで無慈悲に死ぬから心配しないで。

0
Posted by 調停・交渉♂ 2016年08月18日(木) 01:16:08 返信

辞めろよ、自害確定みたいな言い方は・・・結構傷つくんだぞ

0
Posted by 槍兵・中華 2016年08月18日(木) 00:28:34 返信

こんな序盤に三大騎士クラスに落ちられると困るのでランサーには生存してほしい。
せめて、3騎士クラス2体落としてから自害してください

0
Posted by 弓兵・雷砲♀ (混沌・善)◆oXtRvSXmmU 2016年08月17日(水) 23:58:13 返信

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