最終更新:ID:vmoocg80YA 2016年08月19日(金) 00:22:48履歴
―初めて会った時から気に入らなかった。
どこか諦めているような
自分に自由などないというような
選択肢など元からないというような
決められた運命にただ従うしかないというような
全てを受け入れるどこか願望機のような
―――まるであのときの母親のようなあの目が、気に入らなかった。
だから私は――
――――
――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
「上官殿(マスター)!レイシフトに行くぞ!」
「え?ヤですよ。戦いたいならバナナ先輩連れていけば良いじゃないですか。というかマスターは先輩じゃないですか。」
「無論ユーゴも誘ってセージにも既に許可を取っている。後は上官殿だけだ。そして上官殿の上官殿は私にとっても上官だろう?」
「何すかその理論は…。それに準備万端っすね。でも私は行かないっすよ。」
「そもそも私みたいな若い超絶プリティーガールが最前線に立つことが間違っているんですよ!」
「知らないのか?私が上官殿の歳だった頃は戦場の最前線に立ち、楽しい軍生活を謳歌していたぞ?ちょうど今の私の姿だな。」
「英雄(サーヴァント)と一緒にしないでくださいよ。というかそもそも私はライダーのこと全く知らない訳ですしそんなこといわれても…」
「そうか、それはすまない。確かに私のことを知っているはずがなかったな。イギリスに住んでいたわけだしな。本をよく読んでいる訳でもなさそう…というか上官殿だしな。」
「この完璧美少女に向かってなんなんですかその言い草は!?いつか弱みをGETしてやりますからね!」
「ああ、すまない。セージと話していたらうつってしまったようだ。」
「すまないっていえばいいものじゃないっスからね?どこの竜殺しですか。それで本ってことはライダーのことが書いてある本があるんですか?」
「それどころか私が私について書いた自伝、手記があるぞ。それと小説家として何編か出版している。」
「…ライダーって軍人でしたよね?」
「ああ、そうだ。ちょうどさっき言った今の姿の頃に母に反抗して、家出してそのまま軍に性別を偽って入った。」
「反抗して…?」
「私の母は私を愛してはいなかった。それに加えて私を、いや女性を重苦しい隷属と、永久の不自由とありとあらゆる抑圧が揺りかごから墓まで続くものであり、いかなる完成にも見放され、何事にも才能がない。」
「まぁ、要するに世の中でもっとも不幸で、もっともつまらない被造物だと語ってくれてな。また父も、『私の代わりに息子さえいたなら、晩年の支えになってくれたのに。』といわれてな。私の父への愛と私の性への嫌悪が私を突き動かしたのさ。」
「…そうなんですか。その自伝とやらは?」
「初めて怪我をしたときに、老いた父から家のために戻ってきてくれと言われてな。とても名残惜しかったがその時に軍を退役してその後につけていた手記を出版した。小説もそのあとに。興味があったからな。」
「さすがサーヴァントになるだけの行動力があるっすね。私にはとても真似できませんよ。」
「そうでもないさ。私は自らの自由のために行動を起こしただけだ。マスターにだって出来るさ。」
「……『自らの自由』っすか。やっぱり私には無理な気がしますよ。」
「私に出来たんだ。マスターにも――」
「無理っすよ。顔もよくわからない奴に拉致られて、育てられて、出来そこないの聖杯に改造されて、廃棄されて。それで人理焼却。」
「――ここに来るまで私に『自由』はなくて。そしてここからは『未来』がない。」
「もう手遅れで。どうしようもなく詰んでるじゃないっすか。」
「何を言う。いまその『未来』を取り戻すために戦っているだろう。そして晴れてマスターは自由だ。セージの契約書を信じると言っていただろう?」
「そりゃそうっすけど…。相手の目的も、数も正体も何も分かってないんですよ?」
「大丈夫だ。このカルデアには頼りになるやつがいっぱいいるだろう?どこぞの全裸やUMA、錬金術師に挙句には神までいるサーヴァント。それにセージや所長、なによりお前の先輩とかな。」
「なんでそこで先輩なんですか…。」
「不安になるのもいいが前を向け。マスターたちは賢くよい心を持っている。出来ないことなどないさ。」
「不安になんかなってないですよ!だいたい私は気が進まないのに、人理焼却を止めるのを手伝ってあげてるんですからね?能天気すぎるあなたたちが心配になったんすよ!」
「そうか。それはすまない。そして心配してくれてありがとう。それでは最後に一つ。これからいろいろあるだろうがこれだけは覚えておくといい。」
「?」
「『決してあきらめるな。最後まで抗うことを忘れるな。』」
「自分の気に入らないことには徹底的に抗え。それが人生を楽しく生きるコツだ。」
「一言じゃなくないですか。」
「まぁ、老人の世迷いごとだ。」
「その見た目で老人って言われても…。」
「さて!それじゃぁ行くか、上官殿!」
「は?さっき最後って…」
「話は最後だ。これから一緒にレイシフトに行くからな!」
「だから嫌だって――」
「大丈夫だ。ちょっと砲弾の雨の中を駆け巡るだけだから!私の幸運を信じろ!」
「大丈夫な訳が無いでしょう!?どういう頭してんですか!?」
「そのうち癖になって気持ちよくなってくるぞ!」
「引くな!」
「さぁ!早く!」
「話が通じない!?先輩助けてぇ!!!」
――――――――――――――――――――――――
――――――――――――
――――
だから私はマスターを『自由』にすると誓った。
なにが起ころうと。たとえこの世のすべてを敵にまわそうとも。
ナージェジダ アレクサンドル
それがあの日、 私 が 私 になった日に誓った生き方だ。
どこか諦めているような
自分に自由などないというような
選択肢など元からないというような
決められた運命にただ従うしかないというような
全てを受け入れるどこか願望機のような
―――まるであのときの母親のようなあの目が、気に入らなかった。
だから私は――
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「上官殿(マスター)!レイシフトに行くぞ!」
「え?ヤですよ。戦いたいならバナナ先輩連れていけば良いじゃないですか。というかマスターは先輩じゃないですか。」
「無論ユーゴも誘ってセージにも既に許可を取っている。後は上官殿だけだ。そして上官殿の上官殿は私にとっても上官だろう?」
「何すかその理論は…。それに準備万端っすね。でも私は行かないっすよ。」
「そもそも私みたいな若い超絶プリティーガールが最前線に立つことが間違っているんですよ!」
「知らないのか?私が上官殿の歳だった頃は戦場の最前線に立ち、楽しい軍生活を謳歌していたぞ?ちょうど今の私の姿だな。」
「英雄(サーヴァント)と一緒にしないでくださいよ。というかそもそも私はライダーのこと全く知らない訳ですしそんなこといわれても…」
「そうか、それはすまない。確かに私のことを知っているはずがなかったな。イギリスに住んでいたわけだしな。本をよく読んでいる訳でもなさそう…というか上官殿だしな。」
「この完璧美少女に向かってなんなんですかその言い草は!?いつか弱みをGETしてやりますからね!」
「ああ、すまない。セージと話していたらうつってしまったようだ。」
「すまないっていえばいいものじゃないっスからね?どこの竜殺しですか。それで本ってことはライダーのことが書いてある本があるんですか?」
「それどころか私が私について書いた自伝、手記があるぞ。それと小説家として何編か出版している。」
「…ライダーって軍人でしたよね?」
「ああ、そうだ。ちょうどさっき言った今の姿の頃に母に反抗して、家出してそのまま軍に性別を偽って入った。」
「反抗して…?」
「私の母は私を愛してはいなかった。それに加えて私を、いや女性を重苦しい隷属と、永久の不自由とありとあらゆる抑圧が揺りかごから墓まで続くものであり、いかなる完成にも見放され、何事にも才能がない。」
「まぁ、要するに世の中でもっとも不幸で、もっともつまらない被造物だと語ってくれてな。また父も、『私の代わりに息子さえいたなら、晩年の支えになってくれたのに。』といわれてな。私の父への愛と私の性への嫌悪が私を突き動かしたのさ。」
「…そうなんですか。その自伝とやらは?」
「初めて怪我をしたときに、老いた父から家のために戻ってきてくれと言われてな。とても名残惜しかったがその時に軍を退役してその後につけていた手記を出版した。小説もそのあとに。興味があったからな。」
「さすがサーヴァントになるだけの行動力があるっすね。私にはとても真似できませんよ。」
「そうでもないさ。私は自らの自由のために行動を起こしただけだ。マスターにだって出来るさ。」
「……『自らの自由』っすか。やっぱり私には無理な気がしますよ。」
「私に出来たんだ。マスターにも――」
「無理っすよ。顔もよくわからない奴に拉致られて、育てられて、出来そこないの聖杯に改造されて、廃棄されて。それで人理焼却。」
「――ここに来るまで私に『自由』はなくて。そしてここからは『未来』がない。」
「もう手遅れで。どうしようもなく詰んでるじゃないっすか。」
「何を言う。いまその『未来』を取り戻すために戦っているだろう。そして晴れてマスターは自由だ。セージの契約書を信じると言っていただろう?」
「そりゃそうっすけど…。相手の目的も、数も正体も何も分かってないんですよ?」
「大丈夫だ。このカルデアには頼りになるやつがいっぱいいるだろう?どこぞの全裸やUMA、錬金術師に挙句には神までいるサーヴァント。それにセージや所長、なによりお前の先輩とかな。」
「なんでそこで先輩なんですか…。」
「不安になるのもいいが前を向け。マスターたちは賢くよい心を持っている。出来ないことなどないさ。」
「不安になんかなってないですよ!だいたい私は気が進まないのに、人理焼却を止めるのを手伝ってあげてるんですからね?能天気すぎるあなたたちが心配になったんすよ!」
「そうか。それはすまない。そして心配してくれてありがとう。それでは最後に一つ。これからいろいろあるだろうがこれだけは覚えておくといい。」
「?」
「『決してあきらめるな。最後まで抗うことを忘れるな。』」
「自分の気に入らないことには徹底的に抗え。それが人生を楽しく生きるコツだ。」
「一言じゃなくないですか。」
「まぁ、老人の世迷いごとだ。」
「その見た目で老人って言われても…。」
「さて!それじゃぁ行くか、上官殿!」
「は?さっき最後って…」
「話は最後だ。これから一緒にレイシフトに行くからな!」
「だから嫌だって――」
「大丈夫だ。ちょっと砲弾の雨の中を駆け巡るだけだから!私の幸運を信じろ!」
「大丈夫な訳が無いでしょう!?どういう頭してんですか!?」
「そのうち癖になって気持ちよくなってくるぞ!」
「引くな!」
「さぁ!早く!」
「話が通じない!?先輩助けてぇ!!!」
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だから私はマスターを『自由』にすると誓った。
なにが起ころうと。たとえこの世のすべてを敵にまわそうとも。
ナージェジダ アレクサンドル
それがあの日、 私 が 私 になった日に誓った生き方だ。
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