(第一特異点終了後くらいの時間軸だと思って下さい)

弓兵・射貫が集団戦においてやたらと立ち回りが上手かったのでコツを聞いてみた。
「集団戦のコツ?そりゃ勿論各個撃破よ」
カルデアの大食堂で2Lパックの抹茶アイスを食べながら彼は語る。
「複数人が固まってるところに飛び込んでだところで死ににくようなモノだからな。小石投げるなり音立てるなりでまず注意を引くんだ」
言っている間にアイスが半分ほど消え失せていた。バカな、早すぎる。
「そうして数人をその場から離れさせたなら、物陰に引きずり込むなり遠くから射抜くなりで仕留めてしまう」
――――で、メンバーが戻ってこないとなると敵襲を警戒して巡回を初めたり、仲間の捜索を行ったりする。その時を狙って一人ずつ片を付ける。
そう言って彼は悪い笑顔を見せてきた。なるほど確かに道理だが、飛び込まざるをえない状況の時はどうすれば良いのだろうか。
「そういう時はもう腹括るしか無いな。ただし、さっきも言ったが無策で突っ込むのはNGだ」
そういうときはな、とアイスの乗ったスプーンをこちらへ向けて……指で柄の尻を弾いてアイスをこちらへ飛ばしてきた。
咄嗟の事で対応が追いつかず、慌てているところに彼の声が飛んで来る
「そのまま口を開けて動かないように」
言葉のとおりにすれば、成る程寸分違わずアイスがこちらの口へとダイビングしてきた。
お茶の渋味とほのかな甘味、そしてひんやりとした冷気が心地よい。
「とまあ、こんな感じで不意を突いて隙を作る。その間に引き倒すなり投げ飛ばすなりで出来るだけ数を減らしておくのさ」
――――後は背後を取られないよう、壁を背にして戦うだとか、一目散に逃げて狭い通路へ入り込むって方法があるな。
等と言いながら彼は空になった容器を脇へ寄せ、いつの間に持ってきたのか1Lパックのアイス(アーモンドキャラメル味)を食べ始めた。
まだ食うのかコイツ。
「狭い通路は結構オススメだぞ。なにせ敵が一人しか入ってこない。反対側さえ抑えてしまえば後はやってくる奴を倒し続けるだけで良い」
――――射線が塞がるし味方が居るから、爆破もやりづらくなる訳だ。
「勿論気絶した相手を盾にするのも効果的だぞ。あと蹴りを入れるなら膝を砕くつもりで蹴るんだ。まず足さえ封じてしまえば数が居ても楽になる」
本当にアライメント善なのだろうかって感じの言葉が飛び出てきました。
「ま、そうやって立ちまわっていれば結構どうにかなるもんだぜ?復帰しようとしてる奴に追い打ち入れる必要とかあるけど」
とまあ、そんな感じで必要な事を聞けたので、一人で黙々とアイスを食べ続ける射貫さんを置いて部屋に戻ったのでした。

そうしてマスターが大食堂から退出し、周囲に誰も居ないことを確認してから、俺は黙っていた事をぽつりと呟く。
「……集団戦のコツ、各個撃破に関しては嫁さんとその分身を交えて夜間の大乱戦〜多勢に無勢寝室デスマッチ無制限勝負〜で嫌でも身に付いた、とは言えんよな……」
その独り言も空に溶け、後には一人の男だけが残っておりましたとさ。

おしまい

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