最終更新:ID:gGtyA69LRw 2016年08月31日(水) 18:25:38履歴
「教授たちの憂鬱」
「はあ・・・。」
喫煙室で、タバコを吸いながら黄昏れる1人の男がいる。
彼はここ、カルデア大学魔兵科で教鞭をとる男で、生徒達からはロックという愛称で呼ばれている。
「今日もまたあの馬鹿たちの後始末・・・!」
彼はカルデア大学学生会の顧問を担当していた。いた、というのは一時期入院していた時期があったためであり、現在その役職は仲のいい別の教授に託されている。
しかし・・・。
「何であいつらと一緒にノリノリでバカをやるんだあの人は・・・!!!」
叫びたくなるが、他人の目もあるので小声にとどめる。
カルデア大学学生会のメンバーは有能ではあるがそれゆえにやることがいちいち派手なのだ。大学全体のカメラジャックってなんだ、恋愛応援フェアってなんだ!!こちらの処理できるギリギリのラインを攻めるからなお質が悪い。
「失礼するよ。」
ひとりで絶望していると来客があった。
同じ魔兵科で教授をしている牧教授だ。
壮年の男性、割ときつい性格なのだが、それでも人気があるのが、彼の有能さを際立たせる。
「珍しいですね、牧教授がタバコなんて。」
「私にだって吸いたくなる時はあるさ。そして、ここになら君がいると思った。」
ほう、それはつまり自分になにか相談事があるということだ。堅物で有名なこの人からそんな話が聞けるのは珍しい。
「それで、何のようですか?」
とりあえず訪ねてみる。そしてこの時のことをあとから思い返し、後悔した。
「そのだな、どうやら私は生徒の一人を好きになってしまったらしい。」
「そして、そういった事に精通しているという君に話を聞いてもらいたくてな。」
そう照れくさそうに頬を掻く姿は様になっている。
その日、一人の男の胃が悲鳴を上げて死んだ。
「もぐもぐ、美味ぃ。」
1人の少女が食堂で食事をしている。
その幼い容姿のどこに消えていくのか、分からないほどの量を一人で処理している。
こう見えて彼女はこの大学で教鞭をとる教授である。
「相変わらずすごい量を食べるな、お前は。」
そしてその向かいに1人の女性が座る。彼女もまた、年若い見た目をしているが教授。
「不死か、研究室から出てくるとは珍しい。」
不死、と呼ばれた女性はそう呼ばれることが当然かのように気にした様子はない。
そもそもそのあだ名で呼ばれるきっかけは、何度も研究室を実験で破壊しておきながら、何食わぬ顔で傷一つ負っていない様子から生徒がつけたもので、大学の中で広く認知されている。
「そのあだ名は気に入っている訳では無いんだが。まあいい、お前こそ最近逃げ回っていただろう彼女から。」
不死がそう告げると、
「やめろぉ!!どこから出てくるかわからんのだ!」
突然悲鳴のように大きな声を上げる。
それほどまでに彼女にとってこの話題はタブーであったのだ。
彼女は最近、一人の少女に追われている。最近になって大学に編入してきた少女。
何故か彼女を見ると震えが止まらない。そのため姿を見るとつい逃げ出してしまう。
だが、どこへ逃げようとも一度補足されるとなかなか逃げきれないのだ。
「そうか、それは悪かった。だが、」
不死は一切の申し訳なさを感じさせない表情で謝罪をする。そして意味深に言葉を切り、
「君の後に今いるぞ、その生徒。」
「えっ」
そして、今日もまた大学において名物となった一人の教授の鬼ごっこが始まる。
「いやいや、皆元気があって良きことである。」
ここはカルデア大学の理事長室。先程まで、各学部の筆頭教授たちによる会議が行われていた。
何人かの教授達は既に己の研究室に戻っていったが、それでも理事長室に残っている者達もいた。
剣兵科の筆頭教授であり、生徒達からおじいちゃん教授と慕われる彼もまた、その1人である。
「いやいや全くその通りですね、皆元気があってよろしい。私も一緒になって戯れたいものです。」
にこやかに告げるのは、騎兵科の筆頭教授である男。胡散臭い笑顔で、生徒からの評判は良くないが、それでもその手腕は一目置かれている。
しかし、たまに学生たちの悪ノリを助長し、その結果悲惨なことになるため、大学側からは睨まれている。
「お前さんが戯れると学部棟が一つ消し飛ぶだろ、やめとけ。」
そう彼を仲裁するのは調停科の筆頭教授、かつての内閣総理大臣のなど同じことから総理と呼ばれる男。
有能な男ではあるのだが、女クセが悪い。そのため、彼もまた大学側から睨まれている。
「おや、生徒に手を出しまくって減棒食らった男とは思えない台詞ですね。というか何で減棒で済んでるんです?人事にも手を出してるんですか?」
「ちゃんと手を出した子達の面倒は見てるからいいんだよ、お前よりは被害少ないから。てかあれだけ被害だしときながら未だに筆頭教授やってるお前さんの方が不思議だっつーの。」
「二人とも、そこまで。それ以上やるならば模擬戦室にいくのである。」
その一言で一触即発の空気が引き締まる。
彼にそう言われると、二人とも黙るしかない。この男は好々爺ではあるが、怒らせると大変なことになると学生時代からの経験で知っている。
「あまり学園長に心労を負わせるものではない。彼女の手腕は素晴らしく、優れたものではあるがまだ年若い。我々が支えていかなければならない。そうであろう?」
そう、優しく諭す。
これが彼が人気教授である要因。
ただ叱るだけではなく、その後しっかりとアフターケアを忘れないのだ。
「やれやれ、アンタにはかなわないな。」
「そうですね、学生時代から貴方にだけは頭が上がりません。」
そして、この二人もまた、学生時代に彼から教えを受けた身。彼の性質は理解しているし、一つの目標になっている。
理事長を支えるべく筆頭教授になったのも、彼と理事長の祖父から頼まれたからだ。
その言葉を聞き、満足そうに頷くと、席を立つ。
「さて、それでは我々も研究室に戻るとしよう。」
「そうだな。」
「そうですね。」
そして、3人は理事長室を後にする。
三人がいなくなったあとの理事長室では・・・。
「そう思うならここでは別の場所でやりなさいよ!!恥ずかしかったりハラハラしたりで全然落ち着かないじゃない!!!」
とある理事長の叫びがこだましていた。
終われ!
「はあ・・・。」
喫煙室で、タバコを吸いながら黄昏れる1人の男がいる。
彼はここ、カルデア大学魔兵科で教鞭をとる男で、生徒達からはロックという愛称で呼ばれている。
「今日もまたあの馬鹿たちの後始末・・・!」
彼はカルデア大学学生会の顧問を担当していた。いた、というのは一時期入院していた時期があったためであり、現在その役職は仲のいい別の教授に託されている。
しかし・・・。
「何であいつらと一緒にノリノリでバカをやるんだあの人は・・・!!!」
叫びたくなるが、他人の目もあるので小声にとどめる。
カルデア大学学生会のメンバーは有能ではあるがそれゆえにやることがいちいち派手なのだ。大学全体のカメラジャックってなんだ、恋愛応援フェアってなんだ!!こちらの処理できるギリギリのラインを攻めるからなお質が悪い。
「失礼するよ。」
ひとりで絶望していると来客があった。
同じ魔兵科で教授をしている牧教授だ。
壮年の男性、割ときつい性格なのだが、それでも人気があるのが、彼の有能さを際立たせる。
「珍しいですね、牧教授がタバコなんて。」
「私にだって吸いたくなる時はあるさ。そして、ここになら君がいると思った。」
ほう、それはつまり自分になにか相談事があるということだ。堅物で有名なこの人からそんな話が聞けるのは珍しい。
「それで、何のようですか?」
とりあえず訪ねてみる。そしてこの時のことをあとから思い返し、後悔した。
「そのだな、どうやら私は生徒の一人を好きになってしまったらしい。」
「そして、そういった事に精通しているという君に話を聞いてもらいたくてな。」
そう照れくさそうに頬を掻く姿は様になっている。
その日、一人の男の胃が悲鳴を上げて死んだ。
「もぐもぐ、美味ぃ。」
1人の少女が食堂で食事をしている。
その幼い容姿のどこに消えていくのか、分からないほどの量を一人で処理している。
こう見えて彼女はこの大学で教鞭をとる教授である。
「相変わらずすごい量を食べるな、お前は。」
そしてその向かいに1人の女性が座る。彼女もまた、年若い見た目をしているが教授。
「不死か、研究室から出てくるとは珍しい。」
不死、と呼ばれた女性はそう呼ばれることが当然かのように気にした様子はない。
そもそもそのあだ名で呼ばれるきっかけは、何度も研究室を実験で破壊しておきながら、何食わぬ顔で傷一つ負っていない様子から生徒がつけたもので、大学の中で広く認知されている。
「そのあだ名は気に入っている訳では無いんだが。まあいい、お前こそ最近逃げ回っていただろう彼女から。」
不死がそう告げると、
「やめろぉ!!どこから出てくるかわからんのだ!」
突然悲鳴のように大きな声を上げる。
それほどまでに彼女にとってこの話題はタブーであったのだ。
彼女は最近、一人の少女に追われている。最近になって大学に編入してきた少女。
何故か彼女を見ると震えが止まらない。そのため姿を見るとつい逃げ出してしまう。
だが、どこへ逃げようとも一度補足されるとなかなか逃げきれないのだ。
「そうか、それは悪かった。だが、」
不死は一切の申し訳なさを感じさせない表情で謝罪をする。そして意味深に言葉を切り、
「君の後に今いるぞ、その生徒。」
「えっ」
そして、今日もまた大学において名物となった一人の教授の鬼ごっこが始まる。
「いやいや、皆元気があって良きことである。」
ここはカルデア大学の理事長室。先程まで、各学部の筆頭教授たちによる会議が行われていた。
何人かの教授達は既に己の研究室に戻っていったが、それでも理事長室に残っている者達もいた。
剣兵科の筆頭教授であり、生徒達からおじいちゃん教授と慕われる彼もまた、その1人である。
「いやいや全くその通りですね、皆元気があってよろしい。私も一緒になって戯れたいものです。」
にこやかに告げるのは、騎兵科の筆頭教授である男。胡散臭い笑顔で、生徒からの評判は良くないが、それでもその手腕は一目置かれている。
しかし、たまに学生たちの悪ノリを助長し、その結果悲惨なことになるため、大学側からは睨まれている。
「お前さんが戯れると学部棟が一つ消し飛ぶだろ、やめとけ。」
そう彼を仲裁するのは調停科の筆頭教授、かつての内閣総理大臣のなど同じことから総理と呼ばれる男。
有能な男ではあるのだが、女クセが悪い。そのため、彼もまた大学側から睨まれている。
「おや、生徒に手を出しまくって減棒食らった男とは思えない台詞ですね。というか何で減棒で済んでるんです?人事にも手を出してるんですか?」
「ちゃんと手を出した子達の面倒は見てるからいいんだよ、お前よりは被害少ないから。てかあれだけ被害だしときながら未だに筆頭教授やってるお前さんの方が不思議だっつーの。」
「二人とも、そこまで。それ以上やるならば模擬戦室にいくのである。」
その一言で一触即発の空気が引き締まる。
彼にそう言われると、二人とも黙るしかない。この男は好々爺ではあるが、怒らせると大変なことになると学生時代からの経験で知っている。
「あまり学園長に心労を負わせるものではない。彼女の手腕は素晴らしく、優れたものではあるがまだ年若い。我々が支えていかなければならない。そうであろう?」
そう、優しく諭す。
これが彼が人気教授である要因。
ただ叱るだけではなく、その後しっかりとアフターケアを忘れないのだ。
「やれやれ、アンタにはかなわないな。」
「そうですね、学生時代から貴方にだけは頭が上がりません。」
そして、この二人もまた、学生時代に彼から教えを受けた身。彼の性質は理解しているし、一つの目標になっている。
理事長を支えるべく筆頭教授になったのも、彼と理事長の祖父から頼まれたからだ。
その言葉を聞き、満足そうに頷くと、席を立つ。
「さて、それでは我々も研究室に戻るとしよう。」
「そうだな。」
「そうですね。」
そして、3人は理事長室を後にする。
三人がいなくなったあとの理事長室では・・・。
「そう思うならここでは別の場所でやりなさいよ!!恥ずかしかったりハラハラしたりで全然落ち着かないじゃない!!!」
とある理事長の叫びがこだましていた。
終われ!
このページへのコメント
執筆お疲れ様でした!
魔兵科教授の胃は犠牲になったのだ、楽しいイベントの犠牲にな・・・
そして誠実教授が動くと本当ひっでえ事になるんだろうなあ、と思える妙な信頼がある。
何より、理事長の叫びごちそうさまでした!
いやぁ、災獣さんは残念でしたね
そしてさらっと存在する模擬戦室とは…!
乙でした
女子生徒…いったいなにドナなのだ…(脱兎)
作成お疲れさまでしたー!おかしい我はもっと威厳とかあった気がする。多分
おつなの!楽しそうで何よりであります!
この翌日に妾が編入してきたわけッスね!多分!
いやぁカルデア大学は教授連中も濃ゆいなぁ・・・・・・災獣がホラーだが何も問題ないな(え?