最終更新:ID:hnzR321xxw 2016年08月14日(日) 11:13:57履歴
「とある白兎の悪戯物語(ケースファイル)3」
静かな部屋に声が響く。
「すみませんでしたあ!もうしません!」
少し話をしようと思う。なんてことはない、誰に向けた訳でもない話を。
「いや、本当に反省してます、以後大人しくしますよ……」
嘘だ。反省などこれっぽっちもしていない。欠片もしていない。
そもそも騙される方が悪いのであり、第三者に怒られる謂れは微塵もない。
だが逆を言えば見つかる方が悪いのであり、本人に叱られるのは仕方ないとも思っている。
でも反省はしない。絶対にしない。
「本当だって!ちゃんと反省してるよ!」
嘘だ。兎は今日も嘘をつく。そもそも兎は嘘をつく必要がないのに嘘をつく。
その気になれば嘘をつかず、ほとんどバレず騙すことなど容易だ。
なのに嘘をつくのは兎の誠意だ。太刀の悪いことをしない、バレる隙を作っておく。全て兎なりの誠意だ。
「はい、分かりました……」
兎にとって悪戯はコミュニケーションだ。隙を作り、相手が気づき、怒られるというコミュニケーション。
だから今日も嘘をつく。優しい優しい嘘をつく。
「え、いや、それはちょっと……いえ、何でもないです」
だから今日も猫を被る。いたいけな少女の猫を被ろうとするポンコツな少女の猫を被る。
悪戯に失敗ばかりするドジな少女の猫を被る。普通は失敗なんてするはずないのに。
「はい、では失礼します……」
部屋から出て一人、少し黄昏る。当然本気で反省などしていない。そもそも本気で悪戯してないのだから。
黄昏ているのは一人になったから。一人は嫌だ。だからあの小さな島から出ようとしたのだ。
「欺海和邇……っと」
「おっと、俺だけ呼び出してどうした?というかあんまり陸で呼ばないでくれって言ったよな?」
「ごめんごめん、忘れてたよ。ほら、君って存在感薄いじゃない?つい忘れてさ」
「嘘だな。存在が嘘だ。もう1度聞くぞ、どうした?」
「……少し話し相手が欲しかっただけだよ」
「……そうか、なら少し付き合ってやるよ」
「そう、ありがとね」
なんてことない1日、今日は兎は嘘をつかない。
敵と本当に親しい相手には嘘をつかない。それは兎の誠意である。
とある白兎の悪戯物語(ケースファイル)3 完
静かな部屋に声が響く。
「すみませんでしたあ!もうしません!」
少し話をしようと思う。なんてことはない、誰に向けた訳でもない話を。
「いや、本当に反省してます、以後大人しくしますよ……」
嘘だ。反省などこれっぽっちもしていない。欠片もしていない。
そもそも騙される方が悪いのであり、第三者に怒られる謂れは微塵もない。
だが逆を言えば見つかる方が悪いのであり、本人に叱られるのは仕方ないとも思っている。
でも反省はしない。絶対にしない。
「本当だって!ちゃんと反省してるよ!」
嘘だ。兎は今日も嘘をつく。そもそも兎は嘘をつく必要がないのに嘘をつく。
その気になれば嘘をつかず、ほとんどバレず騙すことなど容易だ。
なのに嘘をつくのは兎の誠意だ。太刀の悪いことをしない、バレる隙を作っておく。全て兎なりの誠意だ。
「はい、分かりました……」
兎にとって悪戯はコミュニケーションだ。隙を作り、相手が気づき、怒られるというコミュニケーション。
だから今日も嘘をつく。優しい優しい嘘をつく。
「え、いや、それはちょっと……いえ、何でもないです」
だから今日も猫を被る。いたいけな少女の猫を被ろうとするポンコツな少女の猫を被る。
悪戯に失敗ばかりするドジな少女の猫を被る。普通は失敗なんてするはずないのに。
「はい、では失礼します……」
部屋から出て一人、少し黄昏る。当然本気で反省などしていない。そもそも本気で悪戯してないのだから。
黄昏ているのは一人になったから。一人は嫌だ。だからあの小さな島から出ようとしたのだ。
「欺海和邇……っと」
「おっと、俺だけ呼び出してどうした?というかあんまり陸で呼ばないでくれって言ったよな?」
「ごめんごめん、忘れてたよ。ほら、君って存在感薄いじゃない?つい忘れてさ」
「嘘だな。存在が嘘だ。もう1度聞くぞ、どうした?」
「……少し話し相手が欲しかっただけだよ」
「……そうか、なら少し付き合ってやるよ」
「そう、ありがとね」
なんてことない1日、今日は兎は嘘をつかない。
敵と本当に親しい相手には嘘をつかない。それは兎の誠意である。
とある白兎の悪戯物語(ケースファイル)3 完
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