まいた種が芽を出し、それに喜んで芽を中心にして踊り狂った頃
「アイツがやってきた」

 「アンジェイの隊が消息を絶ちました……」
三つ編みのの言葉にそれまで陽気に笑っていた人達に緊張が走る
もたらされる情報、5Mの獣、銃が効かない、車よりはやい
少女は悟る

「アイツ」が戻ってきたのだと

 逃げてと少女は主張する
アイツには魔法も、騎士の剣も、魔法剣だって効かなかった
領主様の軍も全部食べられちゃった!!
けど、まだ貴方方は匂いを覚えられてない
だから貴方方は逃げられる……だから貴方達だけでも!!
そう必死に主張する少女に青年は尋ねる
「で?君は助かるのかい?」

 ……短い沈黙の後、少女は血を吐くように呟く
私はここから離れられない、家族の最後の場所だし
匂いを覚えられているから
ごめんなさい、こうなるってわかっていて助けてもらってごめんなさい
ごめんなさい、アンジェイさん、飴もらったのにごめんなさい
フアンファーさん、髪結ってもらったのにごめんなさい
言い出せなくてごめんなさい、一人は嫌だなんて思ってごめんなさい、皆ごめんなさい
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……

 泣きながら謝罪を続ける少女の肩に手を置いて微笑む三つ編があった
顔を上げた少女に笑って頷く青年がいた
さて、準備かと逃げる準備ではなく戦いの準備をする人達がいた
 
 「さて、皆、こういう涙は気に食わないよな?」
「準備は万端だ!!やるぞ」

 絶望に沈んだ少女の見上げた青年の顔は笑っていた
口元だけを歪ませて不敵に豪胆に



 その獣は愉しんでいた
「最近少なくなった二本足で動く餌」は体の大きな「彼」にとっては格好の餌である
口をあけて、しめて、大きな個体なら半分、ちっちゃい個体なら丸々いける
特にちっちゃい個体は柔らかくておいしい
雌もうまい、特にちっちゃい個体を守っている雌はたまらない
必死に痛みを耐えて絶叫を殺す様を見ながら少しづつ砕いていく等、実に愉しい

 ああ、そういう意味ではさっきの奴らも愉しかったな
変な筒からちくちく痒い何かを投げてくる奴ら
味はたいして代わりはなかったが、怖がらず、最後まで向ってきた奴ら
今度は一回で殺さずじわじわと手足からしゃぶろう
そうすればもっと愉しくなるかな?
丁度、前にお腹一杯になったから見逃した「保存食」があるから、それで試そう
そいつを助けようとした雌も面白かったし、オマケに葉っぱもある

 全身を真っ赤に染め上げ、5mはある巨大な体を揺らし、四足で駆ける
それはまだ幼生の「なにか」である
本来、英雄に倒されるべき存在の彼を倒すべき英雄は戦争で死んだ
故に荒野を己の物と駆け抜ける「彼」は無限に成長し、何れ「世界を喰らう者」となるはず「だった」



 「彼」は嗤っていた
またあいつ等だ、保存庫に来たらあいつらが沢山いた
彼は腹ペコだった
血の匂いでもう鼻も効かないがこの距離なら逃がさない
全部全部食べて、お腹一杯だ!!
各所に散った餌を一噛み、二噛み
たまに上がる苦痛の声は良い味付け
血は喉を潤す、水
四肢が弾け、首が飛び、生命が終わる
毛皮ではじける痒い感触も心地よい
雄は噛み応えのある肉、雌は柔らかい肉、小さいのは柔らかさの中に甘いにおいのする肉、しわが多いのは駄目な肉
肉肉肉肉肉



 だから「彼は」全く気がつかなかった
家の屋根で青年は笑う、口元だけ歪ませて余裕だと冷や汗を流しながら笑って、手を上げ合図を送る
少女はそれを見ながら不思議に思う
何でここまでしてくれるんだろう?何故ここまで戦えるのだろう?

 泣きそうになりながら少女の表情は問う、青年は目を合わせ
「中途半端が一番良くない、そう、それは絶対に後悔する事になるからね」
その声には悲しいぐらいの「何か」が込められていた

 餌のいる方に飛んだ「彼」が降り立ったのは「良く耕された畑」の上
散った彼らは「予定通りに」そこに「誘導した」「彼に向かい」
「今度は威力を本来のアラヤの加護のある守護者の魔力供給を足して一斉に絶え間なく打ち込む」

 大地を震わす絶叫がはじめて、「彼」から上がった

 少女の視線は悲鳴を上げる「彼」に向う
無敵だった「彼」は痛みに悶え、「悲鳴を上げ続ける口」に向って「柔らかく耕された土の中から鉄の筒がつきこまれ」
「彼」から血しぶきが上がった


 策はなる 
弾丸で動きを止め、「彼の絶叫する口を開いた」にし、「耕された土の中」から「髪を編みこんだ少女」が起き上がり、
「開いた口に筒を押入れ、彼の中を満たす」



 三つ編は歌う。引き金を引きながら、内部に魔力が爆発する弾丸をばら撒きながら彼に聞かせるように
「君はもう、十分食べたろう?10人?100人?血の匂いで鼻も効かなくなるぐらいたっぷりと「僕達」をさ?」
「それ以外も、沢山食べてきたんだって?まぁ、僕的にはそっちも気に入らないけどさ?」
「ごめんなさいって友達が泣くんだ……死んでくれる?」
三つ編の弾丸は空になるまで「彼の内部」にぶちまかれた

 

 目の前の雌が、女が言う「死ね」と
見下す男が言う「終わり」だと
ああ、コレが死かと「彼」は激痛の中悟る
悔しいし、お腹もすく、だがまぁ仕方ない
コレは事実だ、体が動かない受け入れよう……だが



「覚えた」



 お前達の匂いも気配も何もかも覚えた
今度はけして油断しない「もし今度があるのならば全て喰らって終わらせる」
幻想種の分厚い頭蓋骨を銃弾が貫き、意識が消える瞬間、彼は呪った



 光が昇る
いくつもの光が天に昇る
アラヤの守護者にとっての終わりとは「世界が壊れる要因を取り除けた時」
ただただ、呆然とそれを少女は見送る
貴方達は神様なの?

 「いや、違うよ?僕らは元人間さ」
「ただ、ちょっと諦めと往生際が悪過ぎる人間って所かな」
「だからまたね!!いるかどこかで、またあそぼ?」
煤だらけ、土だらけで三つ編みは恥かしげに笑って消えていった

 「可愛い顔が台無しだぜリトルレディ」「服の修繕方法は覚えた?ちゃんと端材で練習するんだよ?」「いつもこの時間は辛いわぁ」
「ある意味、先に逝った連中が羨ましいよな」「んだんだ」「まぁ、さよならだけが人生ではない」
沢山の人が少女の頭に手を乗せたり、手を振って笑って消えていった

 最後に残った青年は少し迷った後
「大丈夫、君の望みはまだ世界で生きている」
「だから生きろ、笑ってな?……やれるもんだろ?」
彼も笑って消えた



 また一人になった少女は黄金色の大地に立つ
黄金の麦は何処までも広がり、涼しくなった風でゆっくりと踊る
ご飯はそれなりに残っていた(缶きりと缶詰……不思議な味のする物だったけど)
一人だが少女は一人じゃなかった残ったものは沢山ある
だから寂しいけど少女は寂しくはない、寂しくはないのだ
教えてもらった歌を歌いながら今日も仕事をし……

 少女は彼女を見つめる片腕を失った少年を見つけた
見慣れた少年であった、彼女に叫び約束した兄だ
呆然と見つめあった後、少女はふと思い出す
ああ、望みは本当にまだあったんだと

 「おかえりなさい、おにぃちゃん!!」
満面の笑みと共にこのお話は閉幕とス

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