「忘れられた荒野に黄金を:アラヤなお仕事」R18G?



 何処までも続く荒野、ゆったりと流れる川、灼熱の陽光照らすそこにぽつんと人影と小屋が見える
幼女と言っても良い少女だ。彼女は真剣に鍬を握り、大地を耕す
砂にまみれたボロボロの衣を纏った少女の頬はこけ、手元もおぼつかない
それでも少女には、畑を耕し、収穫を得る事でしか安定した食を得ることはできない

 父は戦争に行き、紙切れだけになって戻ってきた
母は私の為に身を削り、家の裏で眠っている
兄は戦争にいったまま帰ってこない……父と一緒だろうと諦めることもある

 死んでたまるか
鍬を残りの力を振り絞って振るい、そう思う
死んでたまるか
父の死は紙切れだけが、送られてきた死だ
世界が滅んだ大戦争とかそんなのは私は知らない
ただ、大好きな父……父さんともう会えない事だけを知った
死んでたまるか
母は私をここまで育てる為に身を削って「喰われた」
最後まで母……おかぁさんは私の事を心配して「喰われた」
死んでたまるか
死んだ父の代わりに兄は連れて行かれた
「必ず、必ず戻る!!だからまっていろ!!絶対だ!!」
その叫びだけは胸に残っている
死んでたまるか
街にはいけない、あそこは地獄だ
目が眩む、脚が動かない、けどこのままじゃ死ねない
私が死んだら、私達家族は何もかもがなくなる、おにぃちゃんの変える場所がなくなる!!
存在自体がなくなってしまう……だから!!

 膝から力が抜ける、後に倒れこむ彼女に見えるのは青い、何処までも青い空
(立たなきゃ……立たなきゃ動けなくなっちゃう……「またあいつが来る」……死ねないの!!)
体に力をもう一度入れる。泣いたって誰ももう助けてくれないんだ
這ってでも家に戻って、休んで……また耕して、水路が壊れているから水を今度こそ収穫して、生きる

 影が差す
少女を覆う様に二つの影と沢山の気配がする
灼熱の陽光を遮るその影に戸惑いの声を漏らした少女に向けられる二人の言葉

「よく頑張ったな」「よく頑張ったね」

幻覚かもしれない、それでも少女に久しぶりに告げられた他人からの優しい言葉に
気の抜けた少女はついに意識を手放した



 お肉の焼ける良い匂い……
贅沢に塩胡椒をまぶし、幾重にも鉄串にまいてハーブを塗し
肉汁を油とした音が鳴るたび匂いがはじけるお肉の匂い
お祭りの時とか、誕生日とかそういう時しか食べられない特別な匂いに少女は飛び起きた
身を勢い良く起すと、目に映ったのは変わったきれいな服を着ている目がジトッと据わった三つ編みの少女が
「ゆっくり飲んでね?御代わりはあるから」
と濁った、夢にまで見たお肉の匂いのするスープを少女に差し出して微笑んでいる姿だった

 疑うとかそういうのをはひとまずどこかに飛んで行き、まずがぶ飲みしてしまった少女がいた

 咳き込み、顔を真っ赤にしながら少女は尋ねる
貴方方は誰なのか?なんで私にご飯をくれるの?と
「それは君のお父様とお兄様に頼まれたからだよ」
そう、答えたのは家に入ってきた黒髪の何処にでもいる普通の服装をした……ただ、少しだけ少女より肌の色が薄く変な筒を担いだ青年だった
「我々の隊は生前、貴方のお父様に助けられてね」
「恩を感じていた所、君のお兄さんから君の事を聞いて助けに来たって事さ」
あ、これ証拠ねと差し出された紙には少女は読めないが父が死んだ時と同じ、紋章が刻まれていた
ほ、本当に?
少女の問いかけに青年と三つ編みは一緒に頷き
「「勿論、君を(貴女を)騙してもこれっぽっちも得しないし」」

……とりあえず、少女は安心して泣きながらむくれた

 「へぇ?可愛い〜」「おぃ、お前ロリコンかよ」「ロリコンは犯罪です」「え?お前ゲイだろ?」「俺はバイって聞いたぞ?」
「けど痩せすぎだな、早く太らせないと病気になる」「私は女だぁ!!」「じゃあレズかよ」「え?ショタ?」「ちょっと俺にも見せろよ!!」
「お前ら仕事しろよ」「可愛い女の子をみて、しっかり守るのも仕事では?」「その職務、もう一人ついてるから」「アレは犯罪者じゃなかったっけ?」

 家の前は人、人、人でごった返していた
白い人、黄色い人、黒い人、モヒカンな人、髪の毛がない人、顔に模様が書いている人、何か変な物を私に向けている人、騒いでる人を片っ端から殴っている人
子供、大人、女性、老人……みた事のない人の数と、沢山の変な鋼の馬車、全員の共通な特徴へ肩に担いだ変な筒
具体的にいえば物凄くカオスなその状況に少女は見事に固まった
「あ〜お前ら聞け〜これより「恩義」を返す為生活復興支援を行う。各自俺らが看病してた間に調べた物を下地に持ち場につけ〜!!」

 「了解」「サーイエッサー」「アラホラサッサー」「ガデッサー!!」「真面目にやりなさいよ!!」「フンガー」「ラーサー」

 あっけに取られる少女を尻目に人がばらばらと変な鋼の馬車に乗って散らばっていく
その日から少女の生活は激変した

 水路が直って立派になった、家の隙間風がなくなった、ベットができた、畑から雑草が消えた、お腹一杯食べられた、魔法の様に虚空から物を取り出した
「あいつに壊された」ジェイの家が直った、しっかり眠れた、人と話せた、髪を結って貰えた、ご飯を一緒に食べれた、飴をもらった、歌った、騒いだ、糸で洗濯場を作ってくれた
村の人のお墓を作ってくれた、おかぁさんのお墓が崩れなくなった、お父さんのお墓が立派になった、綺麗な服を縫ってくれた、ケンカをした、仲直りをした……etc.etc

 友達になった

 もう一度少女は聞いた
何でここまでしてくれるの?と
「命令というのも命の借りは命でというのもあるけどね」
聞かれた青年は少し考えてこう続けた
「かっこつけていうなら誰かを助けるのに理由なんて必要かい?とか」
「中途半端にやってまた痩せて倒れる女の子を見たくないとか」
「……おねしょ始末して、助けたのに泣かれてむくれられるのは一回で十分とかかな」

少女は真っ赤になってとりあえず笑っていう青年に殴りかかった



 だから言い出せなかった

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