最終更新:ID:m6HEZgpW3Q 2016年08月14日(日) 23:12:06履歴
「狂犬の宴 第2夜 虚実語り」
座の一角、戦闘練習で使う広い空間に1隻の船が浮いている
船には男が1人、作られた空を仰ぎボトルに入った酒を飲み息をつく
わかっていた、吐息とともに言えなかった思いが零れる
どちらか片方がこうなることはわかっていた
自身が選ばれないこともわかっていた
開けていた別のボトルを煽る、喉の痛みが今は心地よく感じる
全てはわかっていたことだ。わかっていてやったことだ。
幸せになってもらうために身を犠牲にしたといえば耳障りはいい
だけど、それは頼まれてもいないことであり人の心を弄んだことの言い訳に過ぎない
それに男が何もしなくても全ては上手くいっていただろう
結局のところ男の行動に意味はなくただの自己満足に過ぎない
男もそれはわかっている、理解している
だが、それでいい、それが自分の存在理由なのだから
…口にしていたボトルが空になり周りには空のボトルが転がる
男は飛び降り振り返る、誰もいなくなった船が魔力の粒子となって消えてゆく
あの時船と共に海へと消えれば俺は・・・
自嘲気味に呟いた言葉を止め、元いた場所へと歩を進める
先ほどの場所には何も残らず静寂のみがすべてを支配していた
「狂犬の宴 第2夜 虚実語り」
このページへのコメント
寂しさと虚しさがよく出ていて面白かったです!
振ってしまった身としては少々申し訳なさが出てしまいますね……
うっ…………なんだか見てはいけないものを見てしまった気分。
しっとりとしていて、なんだか切ない哀愁が感じられる幕間だと思います。
その後突撃した当事者としてはカッコイイやらややこしくして申し訳ないやらで複雑ですが…………。