「ある怪物と不死の会話」

ある日のカルデア食堂で卓を囲んで食事をしていると怪物がこんなことを言い出した。
「怪物はいつも真正面から堂々と、暴虐をもって蹂躙するものだ!!」
ギリシアの神話に語られる怪物メデューサの子であるクリューサーオールは勇ましく宣言した。それに対して不死がカレーを食べながら、応えるようにしてこういった。
「ああ、私も偶にやるね、正々堂々正面から持久戦」
実際に不死の彼女にとって時間は味方であり、その戦法の前に多くの敵が屈した。しかし、怪物としては意図していたものと異なるらしく。
「なんかちげぇ。なんか微妙にちげぇ」
と不満顔である。しかし、不死としては妥当な戦法と思っているらしくその考えを披露する。
「そうか?怪物は何時も強靭な肉体を頼みに殴るのだろう?つまりそれは私が不死を頼みに戦うのと変わりはないと思ったが」
そうすると怪物は得心言ったらしく、荒々しく荒波の様に捲し立てた。
「ああん!?同じにしてんじゃねぇよ!俺様は宝具使おうがなんだろうが突っ込んでぶっ潰すだけだ!耐えるなんぞ考えてもねェ!!」
それを聞いた不死は思った事があるらしく
「そうか、意外と大変だな」
と少しばかりの情景を目に浮かべて言った。だが、怪物としてはよく分からないらしく納得していない様子だ。
「大変か?そうでもねぇだろ」
と非難するように疑問を投げかけた。投げられた不死は予想していたらしく、書いたものを読むように答えた。
「私にとって何も考えずに戦うというのは困難だ。どうしても攻略しようとするからね、性分と言っても良い」
彼女としては自身の性分を好ましく思っているらしく少しばかり頬が緩んでいる。だが、怪物としてはやはり疑問らしい。それ故か荒く、ぶっきらぼうに怪物として当たり前の解を告げる。
「めんどくせー事考えまくってるってことか。んなもん考えてる暇があったら、ぶん殴りゃいいだろうが」
言い切った怪物は満足しており、これこそが正当なものだと満ち足りた顔をしている。それには不死も同意するところがあったが、自身の生を見つめて分析する。
「ただぶん殴るのでは芸がない、私の長い生はそれだけをするには長すぎた
ということかもしれない」
彼女が思い出した過去は将にそんな、ある種の無駄にあふれていた。これには怪物も得心いき、やはり彼女も人間だったかと思い至った。
「はっ、人間が長生きなんぞするからそうなるんだよ」
笑ってそういった。不死もそれに少しの同意と自身の生に対する悦びを思い言った。
「そうかもしれないな、だが楽しいな。色々考えてより効率的に事が為せた時はある種の徒労感と達成感がある。」
この様に怪物に対して小細工を進めると。怪物は微かに笑って拒絶した。
「小細工は人間がやってやがれ。怪物はただ、粉砕して蹂躙するのみだ」
そんな宣言を聞いて、彼女は大声で自負を込めて宣言した。
「その通りだな!怪物が戦略を練り、巧緻を巡らしてしまえばそれは災害だからな!人に倒せる代物ではなくなってしまう!!私の様な代物でもない限り!」
そして怪物も自身の力を誇示するようにして言った。
「はっ、俺様が頭を使ったらお前なんぞひとたまりもねェよ!!」
しかし、そんなものは幾らでも倒してきた。災害であってもその歩みを止めることはできない。最後に立っているのは自分だと言うように誇るように言った。
「そういう輩はいくらでも相手にしてきたよ、いつも通りゾンビアタックと華麗な魔術で攻略するさ」
彼女として当たり前の戦法であり、当然のやり方だ。それに対して僅かな不安をもって言う。
「俺様が本気出しゃぁそれくらい余裕よ余裕!・・・きっと(小声)」
そうかと呟き、不死はカレーのトレイを返却棚に出しに行った。

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